【映画批評 過去記事から】
僕らは歩く、ただそれだけ■2009年/ビスタサイズ/73分
■制作:アルチンボルド
監督・脚本:廣木隆一
撮影:鍋島淳裕  
録音:西條博介  
編集:太田義則
音楽:SPANK PAGE
出演:安藤サクラ、柄本佑、高良健吾
   菜葉菜、櫻井りかこ、安藤玉恵

 ロックバンド「SPANK PAGE」の楽曲をモチーフに、安
藤サクラ演じるカメラマン・みゆきの人生の転機と再生を描
くロードムービー。

d(>_<  )Good!!(2012.7.25)


 ロケーション撮影に、長めのロングショットが多用される
中、やや即興的・ドキュメンタリ風の作りが登場人物をきわ
めて自然に捉えていて、柄本佑、高良健吾、菜葉菜、櫻井り
かこ、安藤玉恵との短いセッションのように芳醇なドラマが、
観る側にその「世界」をもっと読み込みたい、と思わせる力
を放つ。

 タイトル通り、みゆきはカメラを携えて、故郷の町をひた
すら「歩く」。しかし続く「、」にあたる部分で回想シーン
や再会シーンが挿入されることでドラマが少しずつ展開し、
「ただそれだけ」ではないエモーションが生み出される。
 昔住んでいた町、昔の自分、昔の友人、昔の恋人、昔の記
憶。東京での生活の中で心をすり減らしていた彼女は、「非
日常」的な小さな旅で「過去と現実」を辿って歩くことで、
自分にとっての「日常」を再び取り戻していく。

 安藤サクラの表情、紋切型ではないその繊細さは極めて映
画的で、とりわけ、昔の恋人の妻・安藤玉恵と語り合うシー
ンは、ロングショットの多い本作中、最短のアップで撮られ
ていることもあって、つい見愡れてしまうほどに美しい。
 続くシーン、学校のグラウンド。まるで全身を雨に打た
れたかのような不意の号泣、内面から沸き出してくる様々な
感情の痛々しいほどのリアリティは圧巻だ。

 全てが洗い流された様に、澄み切った瞳で、カメラのファ
インダーに映る、人と風景とを見つめていくみゆき。
 クラスメイトを訪ね歩き、現在の姿を撮るシーンでは、撮
影者であるみゆきの姿は映画のフレームには映らないが、そ
の声には吹っ切れた明るい「表情」が感じられる。
「過去」の自分にさよならを告げ、「明日」の自分に会いに
行くために、彼女は今この「瞬間」にシャッターを切る。

 そして、さりげなく穏やかなラストシーンに静かに満ちて
いる、平凡であること・「日常」が続いていくことの幸福感。
 暮れゆく夕日は「今日が終る淋しさ」のためではなく、ま
た明日が始まることへの「祝福」。まだ「旅」は続いている。

 たとえどんなに迷っても/君の笑顔を思い出し/二人をつ
なぐその先へ/今も僕は歩いてる/ずっと…ずっと

         (SPANK PAGE「ame~rain song」)
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