【映画批評 過去記事から】
パビリオン山椒魚■2006年/アメリカンヴィスタ/98分
■制作:キリシマ1945
監督・脚本: 冨永昌敬
撮影:月永雄太
照明:大庭郭基 録音:山本タカアキ
編集:大重裕二
音楽:菊地成孔
出演:オダギリジョー、香椎由宇
   高田純次、麻生祐未、光石研
   KIKI、キタキマユ、津田寛治


 動物国宝である山椒魚を盗み出し、レントゲン撮影するよ
うに依頼される技師の芳一。しかし一足先にその山椒魚・キ
ンジローは財団一族の娘・あづきの手によって奪われてしま
う。彼女とその周辺の奇妙な人間関係に巻き込まれていく芳
一の行く手に待つものとは…

 ジャンル不明、およそひとことでは形容し難い奇妙奇天烈
な世界。物語の端緒こそ国宝の山椒魚を盗み出す、というエ
スピオナージ的なタッチを匂わせながらながら、ドラマはい
きなりゆらゆらと蛇行し始める。物語の軸となる筈の「山椒
魚」の重要性は、物語の進行とともに曖昧になっていき、ド
ラマもジャンルを横断しながら次第に怪しげなニュアンスを
帯びていく。
 あからさまに日本を舞台(反覆される「富士山」の映像)
にしながら、欧米映画のイメージが画面に濃厚に漂う、その
奇妙な世界観に酩酊しながらクライマックスへ辿り着くと、
微妙なバランスを保っていた「ドラマの中の現実」は、唐突
に映画的非現実世界へ溶け出してゆく。
 一体何がホントで何がウソなのか。それで結局、何がどう
なったのか。判ると言えば判るし、判らないと言えばまるで
判らない。そして、そんな「訳の分からなさ」こそが面白い
のだ…ということだけはハッキリと判る。

 まったくもって一筋縄では行かないが、これほど予告篇が
作りにくい作品もないのではないだろうか。多様なジャンル
の要素が複雑かつ強固に混じり合い、どのシーンを抽出して
も、それは決して作品の素性を的確に表さない。
 まるで「鍋料理」のようにゴッタ煮されたこの映画は、ま
さに「本物とか偽物とか、どっちでもいい」という思想に満
ち満ちた映画であり、その意味において我々もまた「意義無
し!」と叫ばざるを得ない。

 菊地成孔によるクールかつ扇情的な音楽、その使い方を含
めた編集の面白さに乗って、この愛すべきデタラメ世界をナ
ナメに疾走する、オダギリジョーの卓越したコメディセンス
が光る。                  (天動説)


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