【映画批評 過去記事から】
 
2010年10月分・前半、いろいろ観た映画を短くコメン
トする企画。
 ツイッターで書き留めていたキーワードを下敷きに、加筆
修正してまとめています。エントリ記事では評価したい作品
以外は取り上げていませんが、ここでは基本的に観た映画す
べてにコメントしています。
 後日、個別エントリにブローアップするかもしれません。



■10/1『おにいちゃんのハナビ』(10 国本雅広)
おにいちゃんのハナビ 余命幾ばくもない妹のために花火をあ
げようと決めた兄。自分を見つめ直し、
再び立ち上がった彼が祭りの夜空に見た
ものは…。2010年必見の傑作。
●映画批評→



■10/2『お葬式』(84 伊丹十三)
お葬式 「葬式」を題材に映画を描くというア
イデアこそ面白いが映画的にはデタラメ
すぎて、観るに耐えない部分が大半。
 「どうですか、面白いでしょう?」と
言わんばかりの映像が鼻につくし、しか
もそれらが何らドラマに有機的に連動せ
ず、映像の運動性も著しく欠いている。
 エピソードは羅列されるばかりで、映
画の中に「情感」はまったく見えてこな
いから、当然そこには「笑い」もなく、
単なる退屈な「葬式の記録ビデオ」に終始している。  
 そもそも「お骨を拾う」シーンがないことが、作品にとって
致命的で、かつ作品の不完全さを象徴しているのではいか。■



■10/3『チームバチスタの栄光』(08 中村義洋)
チームバチスタの栄光 高度な心臓手術の場において連続して
起こる患者の死。事故か事件か。その原
因を究明に神経内科医の田口と厚生労働
省の役人・白鳥が挑む。
 ほとんど病院内で展開する変則的ミス
テリ映画。生死を分つギリギリの現場に
張りつめる緊張感と、探偵役の田口・白
鳥の凸凹コンビの対比が面白い。相棒が
女性の時の阿部寛の、奇天烈で暴走気味
な快演は、強烈な自己主張をしながらも
相方をぐっと際立たせるが、本作でもふわふわとした存在の田口
が、傍若無人な白鳥に翻弄されることで、劇中どんどん芯が太く
強くなっていく過程がひとつのドラマとなっている。
 人間の生と死が常に隣り合わせの「病院」という空間でさらに
問われる「命への尊厳」。真っ白な世界に滲み出す「悪意」の忌
わしさ。しかし、そこから再び希望と栄光は続いていく。  ■



■10/4『余命1ヶ月の花嫁』(09 廣木隆一)
余命一ヶ月の花嫁 ドラマに不用意にずかずか踏み込まない
演出に好感。静かなカメラワークは、後半
のビデオカメラの映像が活きるように、全
体的に引き気味で、過剰に「喋らない」姿
勢が映画に最後まで一貫している。それゆ
えに人物の心理状況のひとひとつが染み込
むように画面に広がる。穏やかで清冽で、
でも少しも退屈させない作劇は見事。榮倉
奈々のナチュラルな演技も素晴らしい。■




■10/6『ゆれる』(06 西川美和)
ゆれる 久しぶりの再会がもたらした人間関係の
ズレが次第に大きくなり、それぞれの運命
が大きく「ゆれる」。信じていたものが崩
れていく中で、再生することは可能なのか。
 あり得たかもしれない数々の現実の可能
性と、目の前に漂う現実。その中で「ゆれ
る」二人の兄弟の心理。オダギリジョーと
香川照之の「ミリ単位」での演技も秀逸だ
が、蟹江敬三と木村祐一の法廷対決、物語
の着火点・真木よう子と、物語を着地点へ
導く新井浩文の存在感も忘れ難い。
 吊り橋という存在が、象徴的なモチーフとしてドラマの舞台に巧
みに使われているが、画像とともに記憶を浮かび上がらせる写真の
現像液や、過去の記憶を呼び起こさせる8ミリフィルムの映像、こ
れらに生じる「ゆれ」もまた同様に、作品テーマに共鳴する重要な
要素である。
 そして弟と再会した兄のラストショットが再び観る者を作品の中
に「宙吊り」にする。我々はその余韻にいつまでも「ゆれ」続ける
しかない。●映画批評→




■10/6『十三人の刺客』(10 三池崇史)

十三人の刺客(2010) 工藤栄一監督の集団抗争時代劇の名作
(63)の新訳リメイクにして、正に映画
リメイクの本懐というべき、ど迫力の大
活劇。●映画批評→



■10/7『おろち』(08 鶴田法男)
おろち 人の運命を見守る謎の少女・おろちが
出会った哀しくも恐ろしい姉妹の秘密。
 ストーリーの語り手であり、傍観者で
あるおろちが不意にドラマの中に取り込
まれることで、物語が二重のサスペンス
性を帯びる作劇が面白い。「見られるこ
と」と「見られないこと」の意識の狭間
で壊れていく女たちと、ただ運命を「見
続けるだけ」の少女。ゴシックホラー的
世界観の中で展開する心理サスペンスは
皮膚感覚に訴える戦慄的な怖さ。ラストには気が遠くなるような
無常感が襲い、心の奥底がひやりとなる。
 美しき姉妹を演じる木村佳乃、中越典子、おろち役の谷村美月
という3女優陣の競演も素晴らしいが、自分のもとから去ってい
く少女を呆然と見つめる大島蓉子の姿も印象に残る。    ■



■10/9『白昼堂々』(68 野村芳太郎)白昼堂々
 渥美清、藤岡琢也共演のスリ集団を巡
るコメディ。どう見ても「寅さん」風の
人情喜劇として序盤はゆるゆると進むが
状況的に次第に追いつめらていく中盤か
らクライマックス、大金強奪計画に至る
展開は面白かった。とは言いつつも、キ
ャラクターの相関関係においてうやむや
なままに置きっ放しのエピソードも多く
ドラマ進行上の穴としても目立つ。ラス
トもこれで終わっていいのかな?という
感じ。何はともあれ、倍賞千恵子がとてつもなく可愛いキャラ
クターを演じているので要注目。



■10/9『パプリカ』(06 今 敏)
パプリカ 夢を観ること。今観ているこの世界は
夢か現実か。目も眩む圧倒的な作画力は
もちろん、声の演技力、演劇性の高さは
凡百のアニメとは桁違い。映画力もかな
り高く、二転三転するストーリー、意外
なドラマ、想像力を刺激する作劇。その
説得力はアニメーションが持つ幻惑性に
よって無限に増大する。メッセージ性を
色濃く内在しつつも、映画自体は最後ま
でエンターテイメントとして語り切られ
ているのも見事で、映画はかくあるべし、と思う。 
 また声優陣の演技も、洋画吹替と遜色のないレベルで素晴らし
い。これが「声の演技」というものだろうと思う。     ■



■10/10『日本沈没』(06 樋口真嗣)
日本沈没 日本直下の地殻変動により、頻発する
地震、それはやがて日本列島沈没の危機
を知らせる予兆だった…。
 日本存亡の危機の中、民間側(草なぎ
&柴咲)のドラマと政府側のドラマが交
錯しつつ、最終作戦でリンクする構成だ
が、民間側ドラマの展開のもたつき感が
作品全体の緊迫感と相容れず、映画が退
屈になるギリギリでなんとか踏み止まっ
ている印象。草なぎと柴咲のラブシーン
も物語上において不要なのではないか。
 一方それとは対照的に、科学者・豊川悦司と大臣・大地真央の
関係性はぐっと洗練されていて映画的に面白い。
 肝心の日本崩壊のシークエンスは、VFX満載のハリウッド製
ディザスター映画には食傷気味といいつつ、物語が要求する映画
的なダイナミズムに欠けていて、圧倒的に都市崩壊のショットが
物足りない。やはりここは日本が沈没するかどうかはさておき、
さもありなんと思わせるだけのスペクタクルシーン「大盛り」で
楽しませてほしいと思う。                ■


(天動説:映画批評)


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 邦画が中心の映画批評人。
物語そのものより、映画にお
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