【映画批評 過去記事から】
ギブアンドゴー■2008/ビスタサイズ/70分
■制作:ティーオー・エンタテインメント
監督・脚本・編集:森 英人
撮影:加藤純一
照明:鎌田春樹
音楽:大賀智章/星貴也
出演:橋本愛、JUN、斎藤亜美、飯間駿祐
   渡部遼介、伊藤ふみお(特別出演)

『Give and Go ギブアンドゴー』DVDサイト→

 聴覚障害のあるバスケ好きの少女・夏希と、ケガからの再
起を目指すハーフのプロバスケットボール選手・ケニ-が、
バスケを通じて交流を深め、再び明日への希望を掴むまでを
描く青春映画。

d(>_<  )Good!!(2012.7.24)


 70分という時間の中でバランスよくドラマが描かれ、夏
希とケニ-のキャラクター対比による凸凹なビジュアルの面
白さ、バスケットならではのボールの動き、「手話」という
アクションによって、画面に絶えず「動き」が生み出され、
それが映画全体の躍動感につながっている。
 全体の構成もしっかりしていて、最後まで飽きさせない。

 「聴こえない」ことで生じる様々なトラブルや周囲との軋
轢にも屈せず、バスケに打ち込む少女・夏希。クラスメイト
の嫌がらせや教師たちの態度に対して、毅然と抵抗する姿は
ひときわ凛々しいが、それゆえに居場所を失しかけている。
 演じるのは、いまや新進気鋭の女優である橋本愛。本作が
映画デビュー作であり、セリフなしの演技でみせる存在感、
その表情と目の力強さがすこぶる印象的。
 一方、バスケが縁で夏希と出会うことになるケニ-は、外
国人然とした容姿のために差別を受けてきた経験から、夏希
の良き理解者として彼女のコーチになるが、プロ選手として
の今後に、大きな不安と悩みを抱えている。

 そんな世代も性別も境遇も違う二人の若者にとって「バス
ケットボール」とは、目の前に立ちふさがる「孤独と挫折」
を突破するための「武器」であり、心をつなぐ「共通言語」
といっていい。そして二人がパスで交わすボールは、まさに
言葉を越えた「メッセージ」となって、他者へと「パス=伝
達」されていくのである。

 物語後半、寄せ集めのメンバーでチームを結成し、特訓の
末、学校の公式チームとの練習試合に挑むという展開は「少
年スポーツもの」の王道だが、映画全体の中では、ひときわ
ユーモラスで楽しいパートになっている。
 最初はやる気もバラバラでまとまりのなかった彼らも、夏
希とケニ-を軸に、バスケという「会話」によって次第に結
束を固めていく。
 クライマックスでは、自然にメンバー同士で手話が理解出
来ていたりするなど、時間経過とドラマを巧みに「省略」し
つつ効果的に語る作劇など、演出の存在感が光るが、試合シ
ークエンスにおいても、スピード感のある攻防戦、トラブル
と絶対絶命のピンチ、起死回生の反撃など、畳み掛けるよう
な「映画的な面白さ」が熱く展開される。

 映画のタイトル「ギブ・アンド・ゴー」は、別名「パス・
アンド・ラン」ともいうバスケットボール用語である。味方
にパスを出し、その間にディフェンスを振り払って再びパス
を受けるプレイのことだが、バスケを軸にした本作の夏希と
ケニ-の物語も、このプレイがベースになっている。
 ボールをパスして、動き、走り、その中ですべての悩みや
苛立ちが無化される。夢中になれる何かを見つけ、見失った
ものを再び取り戻す。信頼のパスが人と人とをつなぎ、ゴー
ルに結実する瞬間、「世界」はきっと変わる。
 ラスト近くで「その後の夏希」が見せる清々しい表情が、
そのことを鮮やかに証明している。
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