【映画批評 過去記事から】
十三人の刺客(2010)■2010年/シネスコサイズ/2時間21分
■制作:セディックインターナショナル
監督:三池崇史
脚本:天願大介 オリジナル脚本:池上金男
撮影:北 信康
照明:渡部 嘉
編集:山下健治
音楽:遠藤浩二
出演:役所広司、市村正親、稲垣吾郎、山田孝之、伊勢谷友介
   沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、波岡一喜
   近藤公園、石垣佑磨、窪田正孝、伊原剛志
   吹石一恵、谷村美月、松方弘樹


 江戸時代末期。将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶は残
虐な性格で、目に余る非道な振る舞いを続けていた。幕府、
ひいては民衆のため、藩主暗殺の御下命を受けた御目付役・
島田新左衛門は、集めた刺客たちとともに参勤交代の道中、
落合宿で斉韶一行を襲撃する決死の計画を立てる…。
(2010/10/6 天動説)

 工藤栄一監督の集団抗争時代劇の同名作品(63)のリメイ
クだが、同じ素材で同じ映画を作っても、ちょっと視点の角
度を変えることで、ひと味もふた味も違ったものになるとい
う、正にリメイク映画の本懐というべき、秀逸な活劇作品と
なった、新訳版『十三人の刺客』である。

 前半は意外とオリジナルに忠実に、中盤以降はそれを尊重
しながら、現代的な視座から膨らませたドラマや人物像を余
白部分に描き加えることで、より深みと厚みのある作品世界
を構築。観念的にではなく、より心情的に「暗殺」行動を肯
定してもらうための仕掛けとして、オリジナル以上に残虐非
道な暴君として斉韶の内面を深く掘り下げた三池監督ならで
はのハードな演出が凄い。往年の名作のリメイクとあっても
自らの作風はきっちり盛り込む胆力は流石、しかも今回はそ
れが全体のバランスの中に見事なまでにハマっていて、とり
わけ物語中盤の計画準備期間を強固に支える。

 広大なロケセットを縦横に駆使したクライマックスの壮絶
な戦いは、あの手この手を駆使したエンターテイメントとし
て、観客を否応なく巻き込みつつ、殺陣の迫力と面白さを存
分に描き出し、正に圧巻。先陣切って闘う島田や、勝つため
には手段は選ばない平山など、オリジナルとは違う角度から
十三人それぞれの死闘が展開する。
 中でも伊勢谷友介演じる小弥太が最も三池監督版のオリジ
ナリティを体現している。そのやや荒唐無稽にも思える「超
絶的」なキャラクターは、おそらくは「虐げられた人々の情
念が形になった」超自然的存在であり、彼の飄々とした姿が
死の影濃い作品世界におけるアンチテーゼとして、常に異彩
を放つ。また、終始刀を持たない小弥太と、侍として刀を捨
て切れない新六郎(山田孝之)も対照的な関係になっている。
(それぞれが胸に秘める女性を吹石一恵が二役で印象的に演
じているのも面白い)

 しかし長丁場の戦闘のダイナミズムは、強烈な疲労感とも
表裏一体で、次々と倒れて行く刺客たち同様、それは体感的
に増大する。斬るか斬られるかの緊張感の連続と、この場所
で起きている血なまぐさいばかりの(すでに任務や使命すら
無意味な)殺し合いの連鎖の無常感の中で、決定的なカタル
シスは消えていってしまう。オリジナル版と比較しても、こ
の武士社会の限りなく悲愴で、ある意味滑稽な顛末は苦い後
味を残す。
関連記事
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加 はてなブックマークに追加
NEXT Entry
【映画鑑賞記録】2010年10月上旬
Entry TAG
三池崇史   波岡一喜   石垣佑磨   吹石一恵   2010鑑賞  
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
Maps
PROFILE

gadget9007

Name:竹澤収穫



 邦画が中心の映画批評人。
物語そのものより、映画にお
ける「映像表現」の面白さを
重視しています。映画の採点
評価はしません。
 コメント、トラックバック
もお待ちしております。
●連絡先 →

COCO

ACCESS
最新記事一覧
『TOKYO NOIR トウキョーノワール』 Aug 13, 2017
『いぬむこいり』 Aug 12, 2017
『サタデー・ナイト・フィーバー』 Aug 02, 2017
『トンネル 闇に鎖された男』 Aug 02, 2017
『アサシン 暗・殺・者』 Jul 31, 2017
『近キョリ恋愛』 Jul 31, 2017
ペ・ドゥナ(女優)フィルモグラフィ Jul 31, 2017
『極道大戦争』 Jul 30, 2017
『ロックンローラ』 Jul 29, 2017
『心が叫びたがってるんだ。』 Jul 29, 2017
全記事表示リンク
検索フォーム
ブログ内ランキング
ブログパーツ

Page Top