【映画批評 過去記事から】
愛のむきだし■2008年/アメリカンビスタサイズ/237分
原案・脚本・監督:園子温
撮影:谷川創平
照明:金子康博
編集:伊藤潤一
音楽:原田智英
出演:西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ
   尾上寛之、清水優、永岡佑、広澤草
   玄覺悠子、中村麻美、渡辺真起子
   渡部篤郎



 全編4時間近くに及ぶ怒濤の恋愛活劇映画。ヒューマンド
ラマから青春映画、ラブコメ、アクション、心理サスペンス
犯罪活劇、スプラッタ・ホラー等々、あらゆる映画ジャンル
の要素を貪欲に取り込みミキシング。「愛の希求」を究極の
テーマとして、次々に立ちはだかる困難な状況を突破しよう
ともがく少年を描く、衝撃的にして感動的な快作。

 ある日、ユウは街でチンピラに絡まれていたヨーコと出会
う。彼女を亡き母との約束でもある理想の女性“マリア”と
確信するユウ。緩やかにねじれたこの物語は、このヨーコと
ユウのストリートファイトでの出会い、そして謎の女・コイ
ケ、と役者がそろったところで急角度の新展開。ユウの変装
した仮の姿・サソリに恋するヨーコ、理想の女性に出会いな
がらも告白出来ない事態に悶絶気味のユウ。物語は複雑に絡
んで更に複雑にねじれていく。

 チャプターごとに主軸となるキャラクターが変わるスタイ
ルで、複数のドラマが少しずつクロスしながらパズル的に組
み合わされつつ、物語はシチュエーションもタッチもニュア
ンスも二転三転させながら転がり続ける。正常なフリをした
「狂気」と狂ったような表情をした「正気」、それらが意外
な角度からどんどんひっくり返され、観客の一方的な予想や
思い込みを小気味よく裏切り、ねじ伏せ、あるいははぐらか
していく。
 やがて、ユウVS新興宗教団体という大きな対立構図が出
現すると、それまでのコメディタッチとは打って変わって、
観念的でシリアスな世界に突入。さらに予断を許さない壮絶
な物語が続いていく。語りに語り続け、ドラマを堀りに掘り
続けたその先に、映画は突然トンネルを突き抜けたように静
謐な世界にたどり着く。雑念や妄執のない、ただひたすら純
粋な感情だけが結晶として残る。

 ねじれにねじれた世界、もつれにもつれた感情、その絡ん
だ糸がすっきりと一本に結びつく瞬間の感動。このクライ
ックスの瞬間を描くためには4時間という物理的な時間が必
要とされたのではないか。究極の真理を解くためのエピソー
ドを紡いだオムニバス映画、本作は現代における、無宗教に
よる「聖書」なのだ。

 ギリギリまで削ぎ落とした究極の告白、すべてを振り切っ
て、ただ手を差し伸べ合い、互いを求め合うその渾身の愛。
 このラストショットに結実しているのはまさに「むきだし
の愛」である。

 (2010/2/12 天動説:映画批評)


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