【映画批評 過去記事から】
バブルへGO!■2007年/ヴィスタサイズ/116分
■製作:シネバザール
監督:馬場康夫
脚本:君塚良一
撮影:松島孝助
照明:吉角荘介
編集:奥田浩史
音楽:本間勇輔
出演:阿部寛、広末涼子、吹石一恵
   劇団ひとり、森口博子、伊藤裕子
   小木茂光、伊武雅刀、薬師丸ひろ子

 景気の悪化で経済破綻寸前の日本を憂う財務省の下川路は
秘密裏にタイムマシンで過去に戻り、景気崩壊を食い止めよ
うと計画。開発者の真理子をエージェントとして過去へ送り
出すがトラブルが発生、行方不明になってしまう。真理子の
娘・真弓は、下川路からの依頼で母を連れ戻すためにバブル
絶頂期の東京へと向かうのだが…

d(>_<  )Good!!(2010/09/12)


 もし「タイムマシン」が現実のモノとなったら、およそ解
決できない事象などないだろう。そんな発想をベースに、科
学者の発明したタイムマシンで能動的に時間を遡る、という
邦画史上ではあまり類を見ないストレートな設定を爽快かつ
賑やかに描くコメディ。常に世代的な共感を呼ぶ題材で作品
を作り続けてきたホイチョイ・プロダクションが、先行する
洋画作品のテイストを巧みに取り込み、アップテンポのSF
コメディを日本の空気に合うように絶妙なセンスでアレンジ
してみせる。

 80年代終盤から90年代初頭の東京を映像的に再現、セ
ットや小道具などにも当時の流行音楽や風俗をきちんと盛り
込んで懐かしさも満点。「ほんのちょっとだけ昔の世界」は
しかし、天地もひっくり返る程の別世界だった…というアイ
デアはまさに秀逸。
 その一方でタイムトラベルものには定番の要素ともいえる
パラドックス要素を盛り込みつつ、SFかと思えば「新型洗
濯機を開発中にたまたまできてしまったタイムマシン」とい
う奇想天外な設定や、ラブコメかと思わせておいて、巧みな
ひねりを加えて切り返していくストーリーテリングなど、観
る側の思い込みをちょいちょい受け流して、思いがけない角
度から投げ飛ばすトリッキーな作劇が面白さをつないでいく。

 コメディエンヌとして圧倒的なチャーミングさを披露する
広末涼子は、時間軸を突き抜けていく快活さとエネルギーで
終始観るものの目を引く。船上パーティで「未来」式のステ
ップを「現代感覚」で踏んでその場の空気から浮きまくった
り、芸妓に扮して日本舞踊を舞ったりと大活躍。その存在感
のある身体性の魅力で、観客を映画の中にぐいぐい引っ張り
込んでしまう。彼女には、映画のスクリーンを2時間保たせ
るだけの根本的な強さがあることを感じさせる。
 一方、「混乱」の種である真弓に振り回される下川路を演
じる阿部寛は、軽薄で享楽的な過去とシリアスな現代を巧み
に演じ分け、その絶妙な存在感のエキセントリックさが作品
のテイストに抜群にハマっている。

 「日本存亡の危機」を大上段に掲げつつ、実際はラブコメ
のテイストで和えた「親子のドラマ」を描いている本作は、
世界の破綻より家族の平和が大事という、究極的な真理を描
くと同時に、一種のブラックユーモアでもある。それは「堂
々と未来を変えてしまう」という、良い意味で無責任なラス
トにも表れていて、もはやSFかどうかも突き抜けてひたす
ら痛快だ。
 徹頭徹尾ウソ八百を並べ立ててみせる作劇の面白さと、バ
ブル時代の持っていた(それこそウソのような)「過剰さ」
とが見事に融和していて、あの時代を体験した人もそうでな
い人にも楽しめる、映画ならではの「体験」が本作にはある。
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Name:竹澤収穫



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