【映画批評 過去記事から】
時をかける少女(2006)■2006年/ビスタサイズ/カラー/98分
■アニメーション制作:マッドハウス
監督:細田守
脚本:奥寺佐渡子 原作:筒井康隆
キャラクターデザイン:貞本義行
作画監督:青山浩行、久保田誓、石浜真史
美術監督:山本二三
色彩設計:鎌田千賀子
編集  :西山茂
音楽  :吉田潔
声の出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆
     谷村美月、原沙知絵


高校2年生の紺野真琴は、ある日突然、時間を跳躍する能
力を得る。年頃の女の子にはよくあることだと叔母の芳山和
子はいうが半信半疑の真琴。しかしその力の使い方を覚えた
彼女は、日常の些細な不満や欲望の解消にその能力を使いだ
す。何でも願いが叶うバラ色の日々と思っていた真琴だった
が…

 原田知世主演の83年の秀作『時をかける少女』で有名な
物語を換骨奪胎し、より現代的な世界観でリファインしたア
ニメーション映画。
 登場人物をシンプルに絞って綿密に練り込まれたドラマは
伏線や構成が見事で、「時間の反復」と「状況の分岐」をテ
ンポよく見せる演出も、緩急のメリハリがあって退屈なとこ
ろがない。
 それを支えているのは、何気ない日常の動きからディフォ
ルメされた動き(誇張とリアリティのバランス)まで、丹念
に描き込まれた作画クオリティの高さ。特徴的な「影無し」
のシンプルなデザインを採用したキャラクターは、画面の中
でしっかり「演技」していて、何気ない仕草や動きから生み
出される感情のニュアンスの素晴らしさは、マニア受けを狙
った類いの凡庸なアニメ作品とは一線を画している。

 また、声を担当した俳優陣のナチュラルな演技も素晴らし
く、画と声のシンクロ率も相当に高い。とりわけ仲里依紗の
声の質感と演技のニュアンスは、人物の性格や感情を明瞭に
決定づけると同時に、平面的なキャラクターを立体的に肉付
けしている。
 そのキャラクターの演技(作画力)に、淡い色使いながら
もくっきりした背景美術、ロングショットを多用しながら、
ワンショットごとにじっくり腰を据えて撮られたカメラワー
ク、それらが映画的なダイナミズムとなって積み重ねられ、
全体を見事な「映画」として成立させている。

 能動的に時間跳躍できるが故に、次第に「時空間」に囚わ
れていく真琴。それはいわゆる超能力者ではない=ごく普通
の高校生であるがゆえの落とし穴であり、時間を自在に巻き
戻せるということは、つまり彼女の中での「時間」は止まっ
ている、ということである。(クライマックスシーンではよ
り象徴的に表現されている)彼女は流れ去る「時間」の中で
嬉しさや哀しさを人の何倍も経験することで、本当の自分の
気持ちをつかみ取っていく。これは誰のものでもない「自分
自身の時間」を再び力強く歩み出すための物語なのである。

 SF的事象を含んで展開しながら、そのドラマのすべては
3人の若者の感情とその変遷に帰結する。アニメーションと
いう手法ならではの「描写対象の選択/集中的表現」を最大
限に活用して描かれる本作は、彼らの揺れる微妙な想いを純
粋に切り取ってフィルムに焼き付ける事で、見事な「青春映
画」として完結している。

(天動説:2009.8.11 TV編集版 2010.8.15 DVD)



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