【映画批評 過去記事から】
 いろいろ観た映画を短くコメントする備忘録、2010年
7月分です。
 観て気に入った作品全てに言及することは、ある意味難し
いので、エントリに書き切れない作品をフォローしようとい
うのが主旨ですが、観た時の「熱」が冷めないうちに、まず
「形」にする、という目的も兼ねています。(最近はツイッ
ターにコメントを書き残すようにしているので、その短文に
加筆修正)後々、個別にエントリにブローアップするかもし
れません。



■7/28 『14才のハラワタ』(09 佐山もえみ監督・脚本)
14歳のハラワタ 短編60分の中にギュッと詰まった
ほのぼの感。こんなにリアリティのあ
る「普通」の世界を描いた作品はない
と思う。画面もしっかりしていて構図
も良いです。(編集の飛び方が若干気
になりますが…)
 自分の周りの人々をじっと見つめ、
あれこれ思い、でもどこかほんわりと
生きているハラワタ。とりわけ何か大
きな事件が起こるわけでもないのに、
ハラワタがそこにいるだけで何でもないことが映画的にキラ
キラして見えるその素晴らしさ。この不思議な感じは何だろ
う?これはちょっとした奇跡かもしれないと思う。ハラワタ
・スマイルにホッと癒される、必見の好編。
【映画批評】→


■7/24 『7月24日通りのクリスマス』(06 村上正典)
7月24日のクリスマス 大沢たかお、中谷美紀共演のラブ・
ストーリー。長崎とリスボンを妄想で
つなぐ映画的な面白さ、中谷さんの圧
倒的なチャーミングさが全編で光りま
す。恋愛映画というより、恋する女性
の感情や心の振幅を「妄想」というキ
ーワードで切り抜いた「少女漫画」的
世界観による「恋」映画。その平面的
な物語が、俳優陣の好演とロケ撮影の
素晴らしさと映像センスで「映画」と
いう「立体」として見事に組み上げられています。(天動説)



■7/23 『曲がれ!スプーン』(09 本広克行)
曲がれ!スプーン 超能力者たちと超常現象番組のAD
が繰広げるコメディ…とはいえ、描か
れるのは基本的に「普通の人々」によ
る「普通の一日」。「日常」と「非日
常」のサジ加減、コーヒーとミルクの
ように、「スプーン」一杯程度の「超
常現象」が予想外の面白さを生み出し
ていく。
 ユニークな超能力者たちの会話劇が
とにかく楽しくて、面白く観ることが
できるが、登場人物の「動機」に物足りなさを感じるし、喫
茶店での演劇的な面白さとそれを取り巻く「映画的な面白さ」
が今ひとつしっくりとせず、一体感を得られていない点が残
念。でもそれはそれとして、映画そのものを丸ごと楽しめば
それでよいと思う。
 「信じない」人の目の前では「スプーンは曲がらない」の
だから。(天動説)




■7/21 『王手』(91 阪本順治)
王手 大阪は通天閣の下、賭け将棋に生き
る「真剣師」が挑む大勝負。全体的に
ユーモラスで活力のあるドラマに、針
の落ちる音すら響く緊張感。映像でド
ラマを描くという映画の醍醐味、寡黙
なる阪本演出の骨太さに痺れる。豪快
さと繊細さを合わせもつ赤井英和、不
思議な魅力を放つ広田玲央名の可愛ら
しさも必見。
 将棋盤を挟んで一見あまり「動かな
い」ことで、逆に「動き」の面白さが際立つ映画の妙、将棋
が指せない人でも心配無用の娯楽映画。(天動説)




■7/20 『劇場版・ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!』(09 古賀豪)
ゲゲゲの鬼太郎 ちょうど10年ごとにアニメ化され
ている人気作。ゼロ年代の鬼太郎は、
ちょっと不気味なニュアンスも加味し
つつも、なるほど現代風。しかし作品
自体は人間のキャラクターが絡むシー
ンにおける作画・演出に、映画のフレ
ームを支える強度がないのが残念。そ
の反面、妖怪バトルの作画は突出して
クオリティが高く、空間性を意識した
映画的アクションが素晴しい。この作
品全体のアンバランスさが惜しいと思
う。本編冒頭のおまけシーンは鬼太郎ファンには嬉しいサー
ビス。もっと長く観たかった…(天動説)



■7/16 『ハウルの動く城』(04 宮崎駿)
ハウルの動く城 『もののけ姫』以降の宮崎作品に対
しては興味が無くなって久しいんです
が、本作もその考えを覆すには至りま
せんでした。「魔法」というモチーフ
と作品におけるその配合バランスは、
宮崎駿作品を考える上で重要なファク
ターなのではないかと考えられますが
「映画もまた一種の魔法である」とす
れば、その魔力は失われつつあるよう
な感じが強くします…
 キャストの中では倍賞千恵子さんの演技が際立って秀逸で
した。(天動説)



■7/11 『コワイ女』(06 雨宮慶太×鈴木卓爾×豊島圭介)
コワイ女 三人の監督によるホラーオムニバス
作品。3本それぞれ違ったテイストの
怖さを味わえる。ストレートなモンス
ターホラー『カタカタ』、日本的な心
理ホラー『うけつぐもの』といずれも
怖いが、とりわけ第2話『鋼』が素晴
らしい。ちょっとシュールな都市伝説
風怪奇譚。得体の知れない怖さ、とて
つもない官能性を突き抜けた先に待つ
思わぬ感動。「脚」だけで微妙な感情
を表現する菜葉菜の演技力に驚嘆。不気味さから可愛らしさ
へと印象が逆転してしまう「鋼」は邦画史上屈指の名キャラ
クターといっても過言ではないだろうと思う。(天動説)




■7/10 『蝉しぐれ』(05 黒土三男監督)
蟬しぐれ 義と恋と友情の時代劇。武家社会の
運命に翻弄される悲恋の物語ではある
けれど、演じる市川染五郎、木村佳乃
の二人が見せる中途半端ではない、突
き抜けた思いが清々しさすら感じさせ
る。父との別れのシーンも秀逸。狭い
室内での攻防戦では、血脂で刀が斬れ
なくなる、というリアリティを描いて
迫力満点、文四郎の「隠し剣」も目が
醒めるほどシャープで圧倒的。
 人の情けも生きていればこそ。万感こもった切ないラスト
その余韻にしばし浸る感動。(天動説)




■7/10 『ウルトラヴァイオレット』(06 カート・ウィマー)
ウルトラヴァイオレット 傑作活劇『リベリオン』の監督によ
る第2作。さらに凝った映像と目も眩
むようなガジェットの数々を駆使し、
『グロリア』を下敷きにしたような変
則バディ・ストーリーが展開。…面白
いんだけど、ちょっと味付けが濃すぎ
る上に大盛り過ぎてそんなに食べ切れ
ない…という感じ。(天動説)



■7/7 『隠し剣鬼の爪』(04 山田洋次)
隠し剣 鬼の爪 藤沢周平原作の時代劇。自問自答を繰
り返しつつも、一見困難な状況に切り込
んでいく主人公・宗蔵の生き方は、幕末
という時代設定と合わせて印象的で、い
わゆる山田洋次時代劇3部作中において
は、きわめて秀逸な出来映え。
 非情な政治的策謀に振り回された主人
公が放つ必殺剣「鬼の爪」には意表を突
かれるが、映画の主題はあくまで永瀬正
敏と松たか子が織りなすドラマにある。
 二人の思いが最後まで貫徹するラストが清々しい。(天動説)




■7/4 『ソナチネ』(93 北野武)
ソナチネ ヤクザとしての日常が非日常的にね
じれる時、その世界はじわじわと死に
近づく。「暴力」でも「怒り」も突き
抜けた「死」の予感が真夏の熱気とシ
ンクロして、きわめて官能的。
「死」と「生」の二つの世界の狭間に
佇む天使的なヒロイン・国舞亜矢が猛
烈に魅力的。 (天動説)



■7/3 『狗神』(01 原田眞人)
狗神 単なるホラーではなく、心理ドラマ
重視の幻想的恋愛ストーリー。後半で
物語が急展開するので、やや判りづら
いところもあるが、そのミステリっぽ
いところが心理的怖さにつながってい
る。天海祐希、渡部篤郎が醸し出す大
人の雰囲気も効果的。邦画としてはな
かなか成立しにくいタイプの作品だけ
に可能性のひとつとしての存在意義を
強く感じさせる一編である。(天動説)




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 邦画が中心の映画批評人。
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