【映画批評 過去記事から】
道〜白磁の人■2012年/ビスタ/119分
■制作プロダクション:アマゾンラテルナ
監督:高橋伴明
脚本:林民夫 原作:江宮隆之
撮影:ナ・ヒソク
照明:チャ・サンギュン
編集:キム・ヒョンジュ
音楽:安川午朗
出演:吉沢悠、ペ・スビン、酒井若菜石垣佑磨
   塩谷瞬、黒川智花、近野成美、市川亀治郎
   堀部圭亮、田中要次、大杉漣、手塚理美
   チョン・ダヌ、チョン・スジ


 大正時代、日本の植民地統治下の朝鮮で、国籍を越えて朝
鮮の自然と文化を守ろうとした、実在した人物・浅川巧の半
生を描く物語。
d(>_<  )Good!!(2012/7/1 ディノスシネマズ札幌劇場6)


 歴史には描かれない市井の人々それぞれの人生譚。日本と
朝鮮との歴史的関係の中には、まだあまり知られていないこ
と、知らないことが、沢山あることをあらためて実感させら
れる作品である。

 映画全体の質感としては、パキッとしたコントラストの強
い映像の美しさと、ゆったりしたカメラワークが、「カラー
のモノクロ映画」というような、どこか懐かしい匂いを感じ
させる。
 その一方、説話的な部分でシーンのつながりが粗く、時と
場所が急転・急進するために物語展開がせわしなく、本来そ
こに伴うはずの感動が、なかなかスムーズに乗っていかない
のが難点。人物の動機付けや、主人公の行動が最終的にどう
人々に伝わったかなど説明不足の部分も多く、全体的にエピ
ソードの羅列になってしまった感が否めない。こういう映画
こそ尺を長めにとってじっくり描くべきではないかと思う。

 物語そのものは、「白磁のような人」という形容詞を見事
に体現した浅川役の吉沢悠の存在感が最後まで牽引する。そ
れは「浅川に接して変わっていく人々」を描くストーリーそ
のものだ。そして刮目すべきなのは、物語後半に登場する浅
川の後妻役・酒井若菜の好演である。はじめて浅川宅を訪れ、
前妻の写真を観るシーンをはじめとして、表情が表層的なも
のではなく、感情が内面から湧き出るようで、その抜きん出
て自然な演技が、映画をしっかり支えていて素晴らしい。
 また、一貫して朝鮮の人々を嫌っていた浅川の母・手塚理
美、職場の上司・田中要次の細やかな演技にも注目したい。

 芸術は「生活」の中にこそあり、草木は当たり前の「自然」
の中にこそ育ち、人はそれぞれの国に属しながらも同じ「日
常」の中に生きている… 「強制」ではなく「共生」を唱え
た浅川巧は、たとえ脆く割れたとしても、その欠片のひとつ
ひとつが美しさと慈愛をたたえる、まさしく「白磁のような
人」だった。
 正しいと信じることを、何があろうと最後まで貫き通すと
いう主人公の誠実でシンプルな生き方は、それが容易く行え
ない国、未来を見据えて事を成すという誠実さに欠ける今の
日本の現状においては、一際輝いて見える。(了)
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