【映画批評 過去記事から】
家族ゲーム■1983年/スタンダードサイズ/106分
■製作:にっかつ撮影所=NCP=ATG
監督・脚本:森田芳光
原作:本間洋平
撮影:前田米造
美術:中澤克巳 録音:小野寺修
編集:川島章正
出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり
   宮川一朗太、辻田順一、加藤善博、土井浩一郎
   戸川純、阿木燿子


 映画の冒頭、何処からか船に乗って現れる家庭教師・吉本
勝。『流れ者がふらり立ち寄った町で事件を解決してまた去
っていく』というのは西部劇や時代劇でおなじみのプロット
だが、本作の舞台となる沼田家が「定住する共同体」である
のに対して、彼は定住しない通過者=流れ者である。吉本を
「家庭教師=用心棒」というアナロジーで考えるならば、こ
の作品は現代日本を舞台にした「家庭内ウェスタン活劇」で
ある。

 どこか奇妙な沼田家の面々と非日常的な存在としてそこに
介入する吉本のエピソード。微妙にズレながらアドリブ的に
積み重ねられていくシーンの数々は、セリフを必要最小限に
抑え、また音楽を一切使用しないことで必然的にショット内
における演劇的純度が高くなり、心地よいスリルと緊張感に
満ちたものとして展開する。
 じっくり構えた長回しのカメラ、スタンダードサイズの画
面がそれを巧みに切り取り、アップからロングショットまで
あらゆる画角を駆使してフレームに押し込めていくことで、
緊張と緩和のメリハリが映画的リズムを起爆させ、さらに観
ているこちら側の感情をも誘爆させていく。

 雪だるま式に膨れ上がった家族の思惑が一気に火を噴くク
ライマックス。この破壊的な「最後の晩餐」シーンは、丸々
ワンショット一発で撮られており、横一列の食卓についた5
人による壮絶な「アクション」シーンである。銃弾や鉄拳の
代わりに言葉やパスタやサラダが飛び交い、血の代わりにワ
インやマヨネーズが飛び散る。食卓の上で繰り広げられるス
ペクタクルはブラック・ユーモアへと変貌し、家族の不平不
満を並べた「一家団欒のようなもの」の実体が根こそぎ破壊
(清算)される。
 かくして、荒れ果てた「宿場町」を粛正した「流れ者」は
再び静かに船上の人となり、町を去っていく。

 図鑑片手の用心棒・吉本を演じる松田優作は、それまで彼
が演じてきたギラギラした男臭いイメージから鮮やかに脱却
し、風変わりで奇矯な人物をギリギリのエキセントリックさ
と一歩引いた軽やかさとで見事に演じていて、洗練されたユ
ーモア感覚とニュートラルな身体性を獲得している。

 物語のラスト。平穏で平凡に繰り返される日常。西日の差
す室内で、母親と二人の息子たちは「死んだように」眠りこ
ける。響き渡るヘリコプターの旋回音は、また何処かの「家
中がピリピリ鳴ってウルサイ」家族のもとに、新しい「用心
棒」がやってきた知らせなのかもしれない。ある日、吉本が
「船」に乗って現れたように。

 現実は人が考えているほどには現実的ではなく、客観的に
観た場合、それはしばしばシュールな喜劇である。そしてま
た、形を変えてゲームも続いていく。          

(再2009.11.7 天動説:映画批評)


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