【映画批評 過去記事から】
カムイ外伝■2009年/ヴイスタサイズ/120分
監督・脚本:崔洋一
脚本:宮藤官九郎 原作:白土三平
撮影:藤澤順一 江崎朋生
照明:渡邊孝一
美術:今村力 アクション監督:谷垣健治
編集:川瀬功
音楽:岩代太郎
出演;松山ケンイチ、小雪、イーキン・チェン
   伊藤英明、大後寿々花、金井勇太、土屋アンナ
   佐藤浩市、小林薫、山崎努(語り)


「太陽の煌めきも月光の蒼明も一瞬、死の伴奏と変わるその
宿命を自ら選び貫いていく者、カムイ。忍者カムイ。」

  TVアニメーション『忍風カムイ外伝』OPナレーションより

 器になみなみと注いだ水に生じる、表面張力のような緊張
感。映画『カムイ外伝』は、圧倒的なアクションの過激さと
迫力、時代劇としての面白さが映像に漲る、ハードな忍者活
劇。
 大胆なVFXや凝ったワイヤーワークを駆使しつつ、画面
を縦横に使って描かれる忍者アクションの意表をついたトリ
ッキーな動きはとにかく面白いし、松山ケンイチさんの生身
のアクションのキレの良さ、長めのショットを多用したごま
かしのない殺陣の迫力も素晴らしいと思う。
 戦闘シーン以外でも、ダイナミックで映画的なショットが
随所にあり、手を抜かない描写力の凄さ、大胆で挑戦的な構
図、色彩の美しさ、編集の切れ味も素晴らしく、ワンシーン
ワンショットがきわめて大胆で、映画的な熱気をはらんでい
る。
 忍者・武家社会・漁村・家族・渡り衆など、さまざまな形
で描かれる「組織=共同体」の中の人間関係を描く中で、魚
や馬や鮫などの動物、戦いの中で倒される刺客、虐殺される
人々、そういった日常から非日常に至るまでに顕在する「死」
というものの形から目を逸らさず、きちんと描こうとする姿
勢が、生き抜くために戦うカムイの姿をギラギラと照らし出
す。
 安住の世界を求めながらどこにも属さない(=属せない)
カムイ。そして人の世は信頼と裏切りの混濁する世界。つか
みかけた安らぎの時間は白刃の閃くよりも短く、太陽の光に
明るく照らされながらも、死の影が暗く立ちこめる修羅のク
ライマックス。

 命をぞんざいに扱う忍者組織や時の権力に対する「怒り」
はカムイの必殺剣の前に一時的には解かれるものの、決して
絶対的な解決ではありえない。虚無感に包まれるカムイと、
そういう悲惨で過酷な「人間社会」の有り様を、映画は冷静
に、ただただ冷静に見つめ続ける。それでも命ある限り、人
は生きるのだ、と。
 のど元を過ぎても尚、口中に残るが如き映画の「苦さ」が
再び孤独な旅に出るカムイの「傷み」と重なって、観る者の
心を強く揺り動かす一作。

(2009.11.4 天動説:映画批評)


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