【映画批評 過去記事から】
サイドカーに犬■2007年/ヴィスタサイズ/94分
■製作:ビーワイルド
監督:根岸吉太郎
原作:長嶋有
脚本:田中晶子、真辺克彦 
撮影:猪本雅三
照明:金沢正夫
編集:小島俊彦
音楽:大熊ワタル 主題歌:YUI「Understand」
出演:竹内結子、松本花奈、ミムラ、吉田新太
   谷山毅、温水洋一、樹木希林、トミーズ雅、
   川村陽介、山本浩司、椎名桔平、鈴木砂羽


【映画公式サイト→】

 ある朝ふいに1週間の有給休暇をとった薫は、ふと母が家
を出て行った幼い頃の日々を思い出していた。
 夕食を作りに家に来るようになったヨーコさんという女性
は、破天荒な人だったが、子供と対等に向き合って話をして
くれる彼女のことを、薫はだんだん好きになっていった…。

d(>_<  )Good!!(2009/10/23 2016/06/18)


 1人の少女の人生を変えた、ある夏休みの想い出の物語。
 映画は回想という形で主人公・薫と、謎の女性・ヨーコさ
んとのちょっと奇妙な毎日を淡々と綴っていく。

 ヨーコを演じる竹内結子が魅せるカッコいい大人の女っぷ
り、自由で破天荒なキャラクターの面白さが、まず目を引き
ます。従来の「竹内結子」というパブリックイメージを鮮や
かに覆す一方で、複雑な心情の揺れを巧みに表現する、きめ
細やかな表情が素晴らしい。
 中でも薫と一緒にホットケーキを食べながらの会話中、自
然と涙を流してしまうシーンでの演技は圧倒的で、素晴らし
いの一言。
 少女時代の薫を演じる松本花奈も、過剰さを排した素直な
演技がヨーコさんとの対比でくっきりと鮮やかに映り、その
きょとんした表情も愛らしく、成人した薫役・ミムラとのイ
メージのシンクロ率もバッチリである。

 映画はきわめてシンプルにできていて、複雑な背景や人物
関係を無理に掘り下げず、必要以上に描き込まない省略の手
法が映画に独特のリズムを生んでいる。これは、薫の少女時
代が原則、回想シーンであることで、ほとんどの状況描写が
薫の見たまま感じたままに即していることによる。
 カメラ・ポジションも薫の目線の高さに合わせてあり(薫
不在のシーンではカメラはほぼロングショット)、薫の驚き
やとまどいはそのまま観客にフィードバックし、映画という
形の「記憶の旅」を一緒に辿ることになるが、いわばここで
は観客が「サイドカーにのった犬」であるといえる。
 また、70年代後半というあまり例を見ない時代設定も、
その世代の人にとっては懐かしさを感じさせる絶妙な空気感
を捉えていて、美術デザインの効果とあわせて秀逸。

 映画は常に、ある「二人」の関係性を追いかけていて、薫
とヨーコの関係はもちろん、薫と弟、若い夫婦、釣り堀の親
父と薫、薫と少女、薫の父母とヨーコの関係…といった具合
に、カメラも演出も1対1の構図を描き、それを積み重ねる
ことで全体像が浮かび上がり、かつ最後のワンショットまで
それが徹底していることで、作品テーマがブレることなく、
ゆえに「シンプル」に、観るものの胸を打つことになる。

「どちらが運転して、誰がその横に座るのか」
 この作品の全編にわたって問われ続けるテーマを、タイト
ルの「サイドカーに犬」が見事に象徴している。
 ラストシーン、ヨーコさんの姿を求めて自転車をこぐ薫。
人生の「右側」をしっかり歩けるようになった薫に、「画面
には不在」のままのヨーコさんの笑顔がダブって見える。■     
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Name:竹澤収穫



 邦画が中心の映画批評人。
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