【映画批評 過去記事から】
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■制作:オーバーロードピクチャーズ
原案・監督・VFX:秋山貴彦
脚本:秋山貴彦、米村正二、末谷真澄
撮影:岡雅一
照明:吉角荘介
美術:池谷仙克
編集:上野聡一
音楽:千住明
出演:本郷奏多、多部未華子、中村雅俊
村上雄太、加藤諒、小林涼子、堀北真希
原沙知絵、牧瀬里穂、原田美枝子
岩本サトルは、突然の事故で母親を亡くし、自らもそのシ
ョックからリハビリを拒否し、車椅子で生活する毎日。事故
から半年後、遠隔操作する代理登校のロボットを介して1年
ぶりに登校するが、その素っ気ない態度が気にいらない同級
生のジュンに目をつけられ…
傷心の少年がロボットを通して、人を恋をすることで成長
していく姿を描いた物語。自己の存在意義に悩むナイーブな
少年を本郷奏多が、彼と交流を深めるボーイッシュな少女を
多部未華子がそれぞれ好演する。
映画の観どころの一つはなんといってもロボット「HIN
OKIO」の存在感。最新VFXとSFX(等身大プロップ)
を併用し、実風景に違和感なく溶け込ませた映像は見事。デ
ザインも説得力があり、愛らしさやユーモアなど「表情」が
感じられて、秀逸だ。
わりと近未来の世界設定ながら、見慣れた日常風景を地道
に押さえていく(美術セットも奇をてらった作りを慎重に回
避)ことで、作品中のリアリティがしっかり確保されている
し、主観ショット、通常ショットの映像的なメリハリや、ち
ょっとした気の利いた設定のセンスがSF的要素もしっかり
支えていて違和感がない。
「HINOKIO」という仮想世界(デジタル)を介して
現実(アナログ)の世界に触れるサトル。ジュンとの交流の
中で彼の心は次第に現実世界に向かっていき、やや屈折して
いたジュンの心も同じように解けていく。
物語クライマックス、サトルの窮地に為す術のないジュン
が、仮想現実(ゲーム世界=都市伝説)である「煉獄の塔」
に衝動的に登り、「風の笛」(現実世界でのジュンとサトル
を結ぶモノ)を吹いて、それまで募りに募った想いを込めて
サトルの名を叫びますが、その想いの強さは、現実か非現実
かという曖昧な境界をはるかに飛び越えて画面に結実する。
同時に、現実と仮想現実の狭間を彷徨い続けたサトルも、
ジュンに対する想いをカギとして「自らの意志」で現実に帰
還する。(「母との邂逅」は、現実をきちんと前向きに受け
止めたことを意味する、サトルの深層意識なのではないか)
「HINOKIO」システムはサトルにとって、素直には
認めることができなかった父という存在の「代理」でもあり
その父にとっては息子に対する精一杯の絆の証である。親子
を唯一つないでいたシステムから、今改めて解放された時、
二人は新たなステージに向かうことになるのだ。(サトルと
HINOKIOが列車を追って走るシーン!)
人物や設定が曖昧な箇所や、演出的に十二分に語りえてい
ない部分は散見されるものの、ハート・ウォーミングな世界
観がとても魅力的な作品である。
(2009.10.4 天動説:映画批評)
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