【映画批評 過去記事から】
へんげ■2011年/ヴィスタサイズ/54分
■制作プロダクション:OMNI PRODUCTION
監督・脚本・編集:大畑創
特技監督:田口清隆
撮影:四宮秀俊
照明:玉川直人
音楽:長嶌寛幸
出演:森田亜紀、相澤一成、信國輝彦


 原因不明の身体の異変に苦しむ夫。非現実的な状況に
翻弄される中で、その愛の形が揺らぎ、不安に苛まれる
妻。やがてその異変は想像を絶する事態へと急展開して
いく…
d(>_<  )Good!!(2012/6/2 蠍座)


 先人の文脈を拝借するならば、『へんげ』という作品
は、『ウルトラQ』(日常の隣に存在する奇妙な世界を
描いた空想特撮TVシリーズ)という「手術台の上で」、
『鉄男』(89) のクールで扇情的な変異譚と『発狂する
唇』(99) の狂気と不条理が「不意に出会ったような」
映画だと言えるかもしれない。
 不条理な怪異現象に見舞われた夫婦の愛の行方を描く
中で、その題名通り、映画のスタイルまでもが、心理サ
スペンスからオカルト、犯罪スリラー、ホラー、スペク
タクルと、ジャンルやカテゴリを次々と踏み越えて、途
方もない変貌を遂げていく予想外の展開が見どころであ
る。

 謎に満ちた深遠な物語性と強烈な娯楽性の融合、それ
に「特撮技術の復権と継承」という映画作りへの批評性
とを見事にシンクロさせることで、大畑監督は映画の原
初の面白さを大胆不敵にスクリーンに召喚してみせる。
(ここで描かれる異形のキャラクターは、正にこの『へ
んげ』という「映画」の存在そのものであり、次元を超
えて両者は同化している)
 その安定感と緊張感のバランスが取れた画作りと、余
分な説明を一切省いた、弛みない巧みな語り口が圧倒的
な説得力を生み、54分というタイトな上映時間を十全
に使い切って一時も飽きさせない。

 身体の変異、感情の変移、状況の変容、徹底して「変
化する」ことが映像として奇々怪々に提示されていく中
で、しかしここで一貫して描かれるのは、ひと組の夫婦
の愛の形であり、それは唯一「不変」なものである。
 映画スタッフの創意が作品の「総意」となって、破壊
的な驚天動地のクライマックスまで、ドラマを一直線に
「夫婦の愛の物語」として帰結させる。ただその一点を
描き切るために、映画の活力のすべてが徹底的に駆使さ
れていく。ここでも、描かれる物語と同様に、限り無い
不変の「映画愛」「特撮愛」が感じられる。

 ラストシーン、夜の街に響く妻の哀しい叫びが「愛し
ています」というメッセージに聞こえる時、すべてを越
えて最後に残るのはただ無垢な「愛」だけなのだ、と誰
もが確信するだろう。
 『へんげ』は、悲劇も喜劇も惨劇もはるかに超越する、
史上最強の「恋愛映画」である。
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Name:竹澤収穫



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