【映画批評 過去記事から】
■2009年/ヴィスタサイズ/126分
監督・脚本:宮藤官九郎
撮影:田中一成
照明:吉角荘介
編集:掛須秀一
音楽:向井秀徳
出演:宮崎あおい、佐藤浩市、木村祐一
   田口トモロヲ、三宅弘城、勝地涼
   ユースケ・サンタマリア、ピエール瀧
   田辺誠一、哀川翔、烏丸せつこ、中村敦夫

 契約切れ寸前のレコード会社OL・かんな。たまたま動画
サイトで見つけたパンクバンドのライブ映像がネットで人気
爆発、全国のライブツアーが次々と決まるが、実はその映像
が25年も前の物だったことが判明。愕然となるかんなだった
が、今やすっかりオジサンとなってしまったかつてのバンド
メンバーをなんとか集め、ツアーに出ることに。

d(>_<  )Good!!(2009/09/24)


 宮藤官九郎の監督・脚本による傑作パンク・ロック・コメ
ディ。巧みな脚本とテンポよく展開するドラマ構成の面白さ
で、2時間があっという間です。カメラも編集もわりとオー
ソドックスなタッチで、その分、画面内の構成要素がそれぞ
れ際立ってみえます。

 この作品を語る上で、やはり筆頭にあがるのは主演の宮崎
あおいさん。その表情の豊かさ、愛嬌たっぷりに映画全編を
快活に動き回る姿(他のメンバーが原則、定点的なだけに一
層それが際立つ)がとにかくチャーミング。コメディ・シー
ンにもハイテンションで果敢に挑み、絶妙な笑いを生み出し
てくれます。彼女がフレームに入
っているだけで、画面が活き活きとして見えるのはやっぱり
凄いことです。

 そのコメディエンヌ・宮崎さんをバックアップする(映画
の中では彼女を困惑させ続ける)バンドメンバー(佐藤浩市
さん他)4人のキャラクターも揃って個性的で、その一癖も
二癖もある人物像は互いに引き立て合って存在感も抜群で、
観る側をどんどん魅了していきます。回想シーンでそれぞれ
の若い頃を演じる俳優さんも、雰囲気がとにかくそっくりで
違和感がなく、その「一人二役」がキャラクターをさらに大
きく膨らませています。

 前半、にぎやかなコメディタッチで押しまくりながら、次
第にストーリーが進むうちに、個人個人のドラマが浮き彫り
になっていき、しかもそれぞれのエピソードが無理なく映画
の本線に収斂していく抜群のストーリーテリング。前提とし
てのシチュエーション・コメディがくるっとシリアスドラマ
に反転することで、説得力が倍増する演劇的マジックは、笑
いの小ネタひとつにもドラマための伏線が張ってあるという
用意周到さも含めて、まさに宮藤官九郎さんの真骨頂です。

 バンド関係者(主にピエール瀧さん)がバンドについて語
る(インタビュースタイル)シーンが随所に挿入されること
で、続く回想シーンに自然につながり、その後のドラマを波
立たせ、物語をさらに展開させていきますが、このビデオ撮
影のショットはかんな自身が撮影しているビデオの映像にも
つながるイメージであり、

<動画サイト(起)→ビデオ(承)→テレビ(転)→動画サイト(結)>

という風な、映画全体を貫く一連の流れに重ります。

 またこの「動画」に関連したモチーフは「再生」「反復」
のメタファーであり、映像的には「ライブステージ」「車中
の5人」等という形で、ドラマ的には「バンド再結成」「パ
ンクロックへの思い」「あきらめない夢」「兄弟の確執と和
解」等という形で劇中に顕在化しています。
 「反復」されたものは次の段階で「再生」する。
 これはこの作品に一貫して存在するのテーマなのだと思い
ます。そしてこれは「パンク・ロック」の本質ともいえる、
「破壊」のあとに「創造」がある、というテーゼとも相互に
共鳴するものなのではないでしょうか。

 言うまでもなく、ラストの「オチ」(反復/破壊)のあと
には、また次への再生/創造が待っているはずです。それを
想像すると、とても楽しくなるし、この作品も繰り返し何度
も観たいと思ってしまいます。そう、この作品が丸ごとその
まま「パンク・ロック」なのです。(天動説:映画批評)
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