【映画批評 過去記事から】
シンドバッド■1958/アメリカ/ビスタサイズ/88分
原題:The Seventh Voyage of Sinbad ※劇場公開時『シンバッド七回目の航海』
監督:ネイザン・ジュラン
脚本:ケネス・コルブ
撮影:ウィルキー・クーパー
特撮:レイ・ハリーハウゼン
編集:エドウィン・ブライアント、ジェローム・トムス
音楽:バーナード・ハーマン
出演:カーウィン・マシューズ、キャスリン・グラント
   トリン・サッチャー、リチャード・エヤー
   アレック・マンゴー、ハロルド・カスケット
   ダニー・グリーン、ヴィルジリオ・テクセイラ


 欲深い魔術師によって縮小化された婚約者の姫を救うため
に謎の島へ向かうシンドバッド。そこでは一つ眼巨人サイク
ロプスや双頭の鷲ロック鳥、火を吹くドラゴンが待ち構えて
いた…。

 シンドバッドの冒険を描く特撮ファンタジー。スト-リー
はいたってシンプルで、次々出てくるワンダーな世界をワク
ワクしながら楽しめるまさに映画ならではの面白さが詰まっ
た作品です。時代的にざっくりした大らかな作劇(説明をバ
ッサリ省いていきなり始まる冒頭シーン等)になってはいま
すが、人間の業欲をこまかくドラマに入れこんでいたり、人
物描写も単純な喜怒哀楽パターンではなく、適度に隠し味の
スパイスが効いてて、なかなか深みがあります。

 またこの作品ではドラマの発端の「小さくなった姫」から
始まり、モンスターとシンドバッドたちの対比や大きな弓矢
での攻撃など「大きなもの(高い位置からの視線)と「小さ
なもの(低い位置からの視線)」の入れ替わりや対比の面白
さが、ストーリー展開をよりダイナミックなものにしていま
す。これは「ランプの精」ジニーの設定に象徴される、「主
従関係の逆転(シンドバッドと囚人たち)」とも通低してい
るのではないかと思います。

 そうは言いつつも、この作品の目玉はなんといっても、名
匠・レイ・ハリーハウゼンによる特撮のすばらしさ。巨人サ
イクロプス、双頭の怪鳥、火を吐くドラゴン、骸骨剣士と、
キャラクターもバラエティに富んでいて、どれも魅力的。動
きも自然で、文字通り生きているかのような見事さです。

 「ダイナメーション」と称されるこの特撮技術は、可動骨
格を仕込んだ精巧なモデルの動きをコマ撮りするストップモ
ーション・アニメーションを、スクリーン・プロセス(あら
かじめ別撮影した人物・風景を映写したスクリーンをバック
に撮影する技法)で合成するという方法。実写画像に合わせ
て一コマずつ行うアニメートはその労力もさることながら、
モデルの表情や動きのニュアンスが絶妙で、生命感が抜群。
 それは倒され息絶える時の、何とも言えない悲しさが実証
してくれます。
 実際の人物と人形のカットバックや、ヤリや弓矢のスムー
ズなつながりなど、細かいところも上手く、特に骸骨剣士と
シンドバッドの剣戟シーンは圧巻です。VFX(光学合成技
術)主流の昨今ですが、実際に「実物」を現場撮影する特撮
技術が持つ「質感」「重量感」「ニュアンス」の表現の高さ
はまだまだ侮れません。映画におけるSFXの復権に、さら
なる期待をしたい…と思わずにはいられない、そんな名作映
画でした。
(天動説:映画批評)


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