【映画批評 過去記事から】
抜け忍■2009年/ビスタサイズ/70分
■製作:クロックワークス
監督・脚本・編集:千葉誠治
アクション監督 :下山勇二
撮影:植松亮
照明:藤田貴路
音楽:諸橋邦行
出演:肘井美佳、泉政行
   虎牙光揮、島津健太郎
   辰巳奈都子、樋浦勉


 甲賀との争いが続く伊賀の里。役目を終え里へと戻ってき
た伺見(うかがみ)は兄から凄腕の下忍たちが殺されたこと
を聞かされる。下忍頭の不可解な行動に疑惑が募る中、幼な
じみの鎌吏(かまり)が何者かの騙し打ちに合い、捕われて
しまう。たったひとり助けに向かう伺見。果たして鎌吏を助
けることはできるのか?

 なかなか見応えある忍者活劇映画。舞台を伊賀の里に限定
しているため、大仕掛けの派手なシーンはないものの、緊張
感のある対話劇と迫力の殺陣で、一点集中型のピリッとした
活劇になっている。
 下村監督によるアクションシーンは、とにかくスピーディ
ーで、ワイヤーに頼らない殺陣アクションの醍醐味(こっそ
り関節技や空手系のアクションを混ぜてあるのも面白い)が
楽しめる。
 一方で対話式のセリフ劇が多い構成には、もっと画面的な
工夫があってよかったと思うし、似たようなシチュエーショ
ンの画面が多いのもやや気になるところではある。それでも
キャラクターの魅力がうまくバランスをとって、それらをカ
バーしているし、何気ないショットに映画的なセンスが感じ
られるところも多く、基本的に画面がしっかりしているので
ありがちなチープな忍者アクションものとは格段に違うレベ
ルのものになってることは間違いない。

 キャストでは、やはり主演の肘井美佳の魅力を抜きには語
れない。大きな瞳が印象的なルックス、ブレのない立ち振る
舞いや安定した演技力はもちろん、高度なアクションをきっ
ちりこなしているのも特筆すべきポイント。蹴りや太刀捌き
など動きもきりっとしていて危なげなく、作品のリアリティ
を決定づけるのに十分な内容で素晴らしい。 
 主人公の幼なじみ役の泉政行は、好青年の役柄を細かいニ
ュアンスも含めつつ、嫌みなく演じる一方、要所要所ではき
っちりアクションも決めて、作品を脇からしっかり支えてい
ます。
 彼女たちと敵対する虎牙光揮は、演技面では抑えた「静」
の部分をどっしりとした安定感で演じつつ、一転アクション
シーンでは、シャープでスピード感あふれる動きを見せる。
 さらに下忍頭を演じる島津健太郎の不敵にニヤニヤ笑う、
蛇のような悪っぷりもまた秀逸で、セリフに独特の味があり
ついつい引き込まれてしまう。悪役が魅力的でないと、こう
いう活劇は面白さが半減するので、本作を面白くしている重
要な要素だと言える。

 戦国の世の中、状況の変化に揺れ、決断を余儀なくされる
忍者たち。絶対的階級社会である忍びの世界で、敵につくか
味方につくか、進むか立ち止まるか、逃げるか、戦うか…。
 何を頼りに、どう生きるかを問いかける。『抜け忍』は、
そんな物語でもある。

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Name:竹澤収穫



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