【映画批評 過去記事から】
ICHI■2008年/ビスタサイズ/120分
■製作:セディックインターナショナル
監督:曽利文彦
脚本:浅野妙子
撮影:橋本桂二
照明:石田健二
編集:日下部元孝
音楽:リサ・ジェラルド
出演:綾瀬はるか、大沢たかお、中村獅童
   窪塚洋介、竹内力、利重剛
   佐田真由美、横山めぐみ、柄本明


 人とかかわることを避けながら三味線片手に一人旅を続
ける離れ瞽女の市。とある宿場町に流れ着いた彼女は、一
風変わった浪人・藤平十馬と出会い、町で繰り広げられて
いる、若き二代目・虎次率いる白河組と、万鬼を首領とす
る万鬼党の争いに巻き込まれていく。

 本作をひとことで言うなら、女性版『座頭市』となるので
しょうが、タイトルが『座頭市』ではなく『ICHI』であ
るところが、作品を読み解く大きなポイントでしょう。

 脚本は「市の心の覚醒」を縦軸に、刀にトラウマを持つ浪
人・十馬と、万鬼一味との対立を前に苛立ちと焦燥感を抱え
る若き二代目・虎次のドラマが横軸として、それぞれ有機的
に絡む構成。宿場町を二分する勢力抗争に巻き込まれる市、
というおなじみの図式を踏襲しつつ、切った張っただけのア
クション一辺倒ではなく、女性的な視点からのドラマにも重
点が置かれていて、『座頭市』を見事に換骨奪胎した、独立
した時代劇としてしっかりと成立しています。

 なかでも注目はやはり綾瀬さん演じる市の存在感。盲目の
居合斬りの達人という難しい役どころですが、虚無的な乾い
た表情や、時代劇ならではの所作、殺陣の動きはとにかく素
晴らしいです。浪人・十馬との触れ合いにより、前半と後半
で大きく変わる表情の違いや、三味線の演奏シーンなどでみ
せるたおやかさなど、ぜひその凛とした美しさに注目してほ
しいです。
 居合斬りのシーンは、巧みなカット割りとハイスピード撮
影でフォローしているとはいえ、綾瀬さん自身の型や姿勢、
太刀捌きがきちんと出来ていなければ到底成立しないのは言
うまでもないことで、一撃必殺であるところの居合斬りを映
像で表現するという意味においては緊張感、迫力ともに成功
していると思います。

 共演陣の中では、時代性を越えて普遍的な、「若い世代」
像を歯切れよく体現する窪塚くん、着物姿や立ち回りまで抜
群にハマっている大沢さんの、内面的な情動を重層的に描き
込んだ演技が良かったです。前半部分でちょっとだけ登場す
る佐田真由美さんの表現力も見逃せません。

 曽利監督といえば、最新の映像技術を主題に語られること
が多いですが、ロケーション・ショットの多い今作では、じ
っくり構えた画作りと編集のテンポで、わりとオーソドック
スな、時代劇映画ならではの醍醐味がしっかり感じられる作
品に仕上がっています。
 女性が主人公ということもあり、同性の方にもお薦め。先
入観なしで、是非ご覧いただきたい作品です。

(天動説:映画批評)


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