【映画批評 過去記事から】
Happyダーツ■2008年/ヴィスタサイズ/86分
■製作:ブースタープロジェクト
監督・脚本:松梨智子
撮影:柳田裕男
照明:宮尾康史
編集:森下博昭
音楽:ラクライ 主題歌:熊木杏里
出演:辺見えみり、佐藤仁美、加藤和樹
   森泉、新田恵理、村杉蝉之介
   DAIZO、森次晃嗣




 仕事には無気力、恋にも不器用な派遣社員の美奈子は、同
僚の麻衣と訪れたダーツバーで店員の篠塚に一目惚れ。彼に
会いたい一心でダーツバーに毎晩のように通い始める。
 次第にダーツの面白さに目覚めていく美奈子だったが、勢
いで参加したトーナメントでは実力者の八王子に惨敗。恋と
人生の行方を、ダーツの一投に賭けた美奈子は本気でダーツ
に取り込むようになる。

 スポーツとしてのダーツを題材にした、コメディタッチの
ヒューマン・ドラマ。
 一見、動きに乏しいイメージのするダーツが、意外や意外
実に映画的であることに驚かされます。「意識を集中して矢
を3投する」というリズムと、矢が空を切る音・ヒットを知
らせる電子音のタイミングがシーンそのもののリズムにもな
っているのがミソで、プレイヤーの構えの構図のりりしさや、
最小限の動作からくる緊張感がメリハリとなっていて、飽き
ることなく観ることができます。ダーツを投げる、家の入り
口を叩く、変装するなどの描写が、意図的に反復して使われ
ているショットも面白さにつながっています。

 全体的にタイトにフィルムが編集されていて、よくありが
ちな情緒的、感傷的な場面を思い切りよく外してあって、凡
庸なスポーツ根性ドラマに堕するのを防いでいます。告白シ
ーンからラストの勝負シーン、そしてその決着に至る一連の
編集は、絶妙な「外し方」できわめてユニークでした。

 ストーリーは一目惚れをきっかけに始めたダーツによって
自分がどんどん変わっていく、というものですが、なかなか
にハリウッドのライト・コメディ的な味わいがあって、観て
いてとっても楽しいです。なにしろ、辺見えみりさんがチャ
ーミングかつ魅力的に描けていて、ダメOLが自分らしさに
目覚めていく様を見事に表現しています。『エースをねらえ
!』の「お蝶夫人」ばりに登場する森泉さんの、いつものサ
バサバした雰囲気も見事に作品にマッチしていて、シーンを
盛り上げています。

 恋の行方も勝負の行方も、彼女にとっては絶対的・最終的
な目標ではなく、あくまで自分らしさをもう一度手にするた
めの過程なのであって、ラストでのモノローグはそれを証明
しています。この鮮やかで清々しい結末は、この映画をとて
も素敵なモノにしていると思います。
 ダーツをやったことなくても全然問題なく楽しめる、小粒
ながら、美味しさ満点のエンタテイメント作品でした。


(天動説:映画批評)


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