【映画批評 過去記事から】
嫌われ松子の一生■2006/ヴィスタサイズ/130分
■制作プロダクション:スープレックス
監督・脚本:中島哲也 原作:山田宗樹
撮影:阿藤正一
照明:木村太朗 美術:桑島十和子
VFXプロデューサー:土屋真治
CGディレクター:増尾隆幸
編集:小池義幸
音楽:ガブリエル・ロベルト、渋谷毅
出演:中谷美紀、瑛太、香川照之、伊勢谷友介
   市川実日子、黒沢あすか、柴咲コウ
   奥ノ矢佳奈、柄本明


 平成13年。亡き叔母の遺品整理を頼まれた川尻笙。長く
知らされていなかった叔母・松子の存在に驚きつつ、彼女の
人生に思いを馳せる。順風満帆の人生から一転、彼女に身に
起きた波乱万丈な人生。そしてその結末とは…
d(>_<  )Good!(2009/05/16)


 ストレートに作ればシリアスでヘヴィになりそうな素材を、
徹底的にポップに再構築したその思いっきりの良さとセンス
の素晴らしさ。これだけ斬新な切り口で語られたユニークで
チャーミング映画も、そうそうないと思う。全体的に50年
代ハリウッド映画風のテイストを盛り込んであるのも面白い。

 暗く沈みがちな松子の境遇を描くシーンを、ミュージカル
仕立てにしたり、コント風なタッチで小気味よくまとめてみ
たり、あの手この手の技でそのマイナスイメージを逆転させ、
観る側の気分が澱んだり停滞することを鮮やかに回避。主人
公の心象イメージを表現する手段としてのCGもカラフルで
楽しく、それでいて画面がうるさくないので効果満点だ。
 テンポのいい展開は、ドラマを後半まで一気に引っぱり込
むパワーにもなっていて、松子の人生終盤のドラマをじっく
りと描きつつ、「現在」のシーンへ繋げてみせるところもか
なり巧い。

 それにしても中谷美紀の演技のキャパシティはやはりスゴ
いものがあり、どんどん変わっていく状況と運命に沿って、
次々に変わっていく心情をハイテンションで表現する。歌っ
て踊って怒鳴って泣いて、そしてラスト・ショットでみせる
笑顔の清々しさ。
 松子を取り巻く人々も素晴らしく、ポップでカラフルな画
面のパワーに負けていない。現代の物語の語り部でもある瑛
太、現代と回想パート両方に登場する香川照之、伊勢谷友介
の厚みのある存在感、ラストで松子を迎える市川実日子の慈
愛の表情は実に素晴らしい。

 最低最悪の転落人生をおくる松子だが、そのバイタリティ
と健気さを追いかけていくうちに、「嫌われ」どころか、ど
んどん愛すべきキャラクターになっていく不思議さ。「悲劇
的」結末からスタートしたはずの映画が「喜劇的」に展開し、
同じ結末に辿り着きながらも、最終的にはまったく別次元の
「ハッピーな物語」で幕を閉じるという映画的マジックの妙。
「誰にでも、どんな風にか人生はある」、それを映画として
見事に描き出した傑作エンタテイメントである。
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