【映画批評 過去記事から】
天使の牙■2003/ビスタサイズ/1時間59分
■制作プロダクション:トワーニ
監督:西村了
脚本:寺田敏雄、落合正幸 原作:大沢在昌
撮影:河津太郎
編集:普嶋信一
音楽:松本俊明
出演:佐田真由美、大沢たかお、萩原健一
   黒谷友香、豊原功補、永井大、嶋田久作
   佐野史郎、要潤、小木茂光、西村雅彦


 麻薬組織王の愛人・はつみを護衛することになった女刑事
・明日香。だが2人は何者かによって射殺されてしまう。最
新の医療技術を使って、明日香はその脳をはつみの体に埋め
込まれてアスカとして蘇生。彼女は麻薬組織摘発のために組
織に潜入するが、そんな彼女の前にかつての恋人だった男・
古芳が姿を現わす…。

 なかなか一言では語り尽くせない、奇想天外なエンタテイ
メント作品。
 型にはめてなにかを語ろうとすればすべてがネタばらしに
なってしまうのですが、古今東西の娯楽映画の要素を手際よ
く煮込んでいて、程よく空腹が満たされる感じ、しかもなか
なか美味しいのが嬉しいところ。初期の頃の007シリーズ
のようなテイストも隠し味になっています。

 この作品の醍醐味は、「自分以外の誰も信じるな」と劇中
のセリフにある通り、とにかく出てくる人物全員が揃いも揃
って怪しい雰囲気で、誰が味方で裏切り者なのか、さらには
作品の本当の主人公はいったい誰なのか最後まで予断を許さ
ないという面白さにあります。そしてそれを可能にした俳優
陣の、どっしりと安定感のあ沢さんのハードボイルド全開な
キャラや、悪ボス・ショーケンの静かなるキレっぷりにご注
目。
 反則ギリギリでドラマを2転3転したあげく、もう一発ダ
メ押しで放たれる際どいパンチが、物語のラストを余韻たっ
ぷりに締めくくります。このシーンは特に、過不足ない演出
と歯切れのいい編集が見事でした。

 とはいいつつも、『脳移植』という設定をフォローするシ
ークエンスが弱かったり、映画冒頭部分が「掴み」としては
リズムが良くないとか、各キャラクターの掘り下げ不足など
難点もいくつかはありますが、しかしそれでも作品をトータ
ルで観た場合には、作品自体が映画として「走っている」感
じがしてなかなか好感が持てますし、なにより「前向きに破
綻」している方が『映画』として面白かったりするものです。

「自分以外の誰も信じるな。」
 このセリフは、そのまま本作を未見の方へも贈りたいと思
います。他人の意見や感想に惑わされることなく、是非ご自
分の目で確かめてみてください。

(天動説:映画批評)


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