【映画批評 過去記事から】
DRIVE■2002年/ビスタサイズ/102分
■IMJエンタテインメント、ツインズジャパン
監督・脚本:SABU
撮影:佐藤和人
照明:大坂章夫
編集:松竹利郎
音楽:村瀬恭久、坂東俊秀
出演:堤真一、大杉漣、安藤政信、寺島進
   柴崎コウ、根岸季衣、筧利夫、松尾スズキ
   松雪泰子


 感情を押し殺して生きている平凡なサラリーマン朝倉。あ
る日、彼が運転する車に銀行強盗犯の3人組が乗り込んでく
る。仲間割れした1人が運転する車を追えと脅すが、律儀で
神経質な朝倉はかたくなに交通ルールを守り、その車を見失
ってしまう。予期せずおかしな連帯関係となった4人の道行
きは、やがて奇妙な縁に導かれてゆく。

 練り込まれた脚本と疾走感あふれる映像で、毎回極上の映
画を届けてくれるSABU監督によるロードムービー。逃走中の
強盗3人組と彼らに偶然車を占拠された男が、その道行きの
中で1人ずつ自分の過去や現在の状況を振り返り、進むべき
道を見つけていくという物語ですが、語り口はあくまでオフ
ビートな活劇スタイルを取りつつ、実はベースにあるのは、
「仏教」的世界観。「人の縁」をテーマに、ちょっと奇妙で
ユニークなドラマが展開します。

 彼らに訪れる「人生の分岐点」はどれも唐突で強引ともい
える偶然から始まります。偶然迷い込んだライブハウス、偶
然隣り合わせた恋人、偶然たどり着いた病院…。
 しかしその偶然は、劇中で語られる通り「人の世の必然」
であり、それに付き合い見届ける役目である主人公の朝倉は、
偶然事件に巻き込まれた被害者であると同時に、所謂「因果
応報」を起動させる「装置」(「縁」という概念が具現化し
たもの)というべき存在になっていて、男たちを「結果的に
導く」役目を担っています。それゆえに、3人組を出し抜い
て逃げた男は「結果的に朝倉の車(縁)に乗り合わせなかっ
た」ために、絶望的かつ孤独な奮戦を強いられる羽目になっ
たのです。
 そのバカが付くくらい几帳面で倫理観に厳しい性格が、彼
に「白羽の矢」が立った理由なのかもしれませんが、そんな
神仏がかった力をまったくもって自覚していない朝倉が「頭
痛」というサインを予兆に目前で「発動」する奇跡的な状況
に、しばし呆然となる様がコミカルに描かれると同時に、通
常あり得ないその状況に対峙する男たちの一部始終をあの手
この手で映画的に描き出しているのがこの作品の面白さとい
えます。
 そして当の朝倉もまた、神仏的かつ非日常的な世界におい
て、自身の人生の「因縁」に立ち向かうことになります。
 ラスト、あいかわらず自覚のないまま、すべてを丸く収め
て、自身の人生のハンドルをも大きく切ることになった朝倉
の爽やかな表情。この作品を観た人もきっと同じ表情をして
いることでしょう。

 俳優陣では、SABU作品常連の堤さんのマジメっぷりと
慌てっぷりのユーモア感、三人組との掛け合いの面白さには
ついつい引き込まれてしまうし、仏の教えをロックで吠えま
くる寺島さんや、孤軍奮闘の筧さん、ちょっと控えめでチャ
ーミングなキャラクターを演じる柴崎さんの魅力、ちょっと
だけ登場する松尾スズキさんや根岸季衣さん、松雪泰子さん
の各人各様の弾けっぷりも見所です。
 映像は「粘る」ショットと「走る」ショットのメリハリと、
意外性のある演出、切れ味のいい編集によって、監督の持ち
味である映画的な疾走感が全編に感じられ、作品テーマが観
念的に陥らず、きちんと映像で表現されていて素晴らしいの
一言。
 SABU監督のフィルモグラフィ・前半戦の集大成ともい
える、そんな秀作です。

(天動説:映画批評)


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