【映画批評 過去記事から】
グラントリノ■原題:Gran Torino
■2008年/アメリカ/シネマスコープ/1時間57分
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
撮影:トム・スターン
編集:ジョエル・コックス、ゲイリー・D・ローチ
音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーブンス
出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー
   クリストファー・カーリー、ジョン・キャロル・リンチ
   ブライアン・ヘイリー、ブルック・ジアー・タオ
   チー・タオ、ドゥーア・ムーア、ソニー・ビュー



 自動車工場に長く勤めていたウォルト・コワルスキーは、
引退後は変化のない平凡な生活を送っていた。妻はすでに亡
く、息子たちとも疎遠で、信頼できる話相手といえば愛犬の
デイジーだけ。そして近所にいるのはウォルトが嫌悪するア
ジア系少数民族の移民たち。ウォルトは目に入るものすべて
に怒りを覚えながらも、積極的に世の中と関わることなく、
ただ人生が終わるのを待っていた。何者かが自慢のグラン・
トリノを盗みに入るまでは。
 盗みを強要された内気な少年・タオとウォルトの交流が始
まり、二人の間に芽生えた思いがけない友情は、それぞれの
人生を大きく変えていくことに…

 映画の感想を述べる時に「感動」という言葉をよく使いま
すが、『グラン・トリノ』はまさに掛け値なし、正真正銘の
「感動」というものを与えてくれます。イーストウッド作品
はいつだって良いに決まっているのですが、またまたやられ
てしまいました。
 過去の自作へのオマージュ的要素も盛り込んだ(意図した
かどうかは不明ですが)この作品は、まさに俳優クリント・
イーストウッドの総決算であり、囁かれる俳優業引退が仮に
事実であったとしても、その掉尾を飾るにふさわしいものに
なるだろうと思います。

 頑固で偏屈なキャラクターはイーストウッドの演じるキャ
ラクターの定番ですが、今回の役柄ウォルト・コワルスキー
は口の悪さも筋金入り。そのキャラクターのアクの強さが映
画の序盤から前半を牽引します。
 中盤はモン族との交流、とりわけ少年タオとの関係、そし
て自身の感情の変化が綴られます。各キャラクターに対して
どんどん親近感が湧いてくるのですが、やがてそこにある事
件が起こって…という「序破急」の構成。素材はある意味オ
ーソドックスですが、そこは「料理人」の腕が違います。

 丹念に撮られたひとつひとつのショットの深みと厚み、そ
れが醸し出すシークエンスの面白さ、余裕と自信に満ちた編
集、キャラクターへの気配りと俳優陣の好演、ユーモアあり
サスペンスあり、張られた伏線をきっちりクライマックスで
収斂させる脚本の手際の見事さ、一切の無駄なく、すべてを
きっちり「映像」で描き出した演出、等々「映画」として完
璧といっていい出来映え。
 そしてあまりに衝撃的な(ファンなら驚愕の)クライマッ
クス、そして訪れるラストシーンのしみじみとした余韻。
 この後味の「深み」が、イーストウッド作品の醍醐味です
ね。

 喜怒哀楽あらゆるドラマをこれほど明解かつ奥深く描き出
した映画はないと思いますし、しかもこれだけの内容で上映
時間が2時間を切る117分。まさに神業というしかありま
せん。
(天動説:映画批評)


↓よろしければ御投票ください。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村
関連記事
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加 はてなブックマークに追加
NEXT Entry
『ROBO★ROCK ロボ・ロック』 夢を抱いて生きるということ。
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
Maps
PROFILE

gadget9007

Name:竹澤収穫



 邦画が中心の映画批評人。
物語そのものより、映画にお
ける「映像表現」の面白さを
重視しています。映画の採点
評価はしません。
 コメント、トラックバック
もお待ちしております。
●連絡先 →

COCO

ACCESS
最新記事一覧
『キング・アーサー』 Jul 13, 2017
『22年目の告白−私が殺人犯です−』 Jul 07, 2017
『美しい星』 Jun 30, 2017
『バンコクナイツ』 Jun 30, 2017
『ダブルミンツ』 Jun 24, 2017
『武曲 MUKOKU』 Jun 24, 2017
『TAP THE LAST SHOW』 Jun 21, 2017
『花戦さ』 Jun 20, 2017
『無限の住人』 Jun 10, 2017
『あん』 Jun 05, 2017
全記事表示リンク
検索フォーム
ブログ内ランキング
ブログパーツ

Page Top