【映画批評 過去記事から】
パーマネント野ばら■2010年/アメリカンヴィスタ/100分
■制作プロダクション:リクリ
監督:吉田大八
脚本:奥寺佐渡子 原作:西原理恵子
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
編集:岡田久美
音楽:福原まり
出演:菅野美穂、江口洋介、畠山紬
   小池栄子、池脇千鶴、宇崎竜童
   夏木マリ、加藤虎ノ介、山本浩司



d(>_<  )Good!!(2011/11/05)


 海辺の漁師町に一件だけある美容院「パーマネント野ば
ら」は、町の女性たちが思いの丈を自由に吐き出すことの
出来る憩いの場所。夫と別れて、一人娘と共に実家である
この店に戻って来たなおこ(菅野美穂)の周辺は、町の女
性たちの恋愛話のあれこれで、毎日いつも賑やかだ。

 そんななおこの暮らしを中心に、その両親の大人の夫婦
関係、女友達との友情などが絶妙なユーモアを交えて描か
れる本作は、一見明るくのんびりとした空気に包まれた恋
愛映画を装いながら、その中身は失恋と破局が幾重にもな
った、いわば「悲恋映画」と言えるのかもしれない。

 小さな町で日々起こる数々の恋愛模様、なおこの友人た
ちのあまりにも男運に恵まれないエピソードの数々。超ハ
ードなフラれっぷりのともちゃん(池脇千鶴)の壮絶エピ
ソードや、突拍子もない語り口で繰り出されるみっちゃん
(小池栄子)の過激でバイオレンスな男関係など、時にブ
ラックユーモア的な描写を交えて綴られる悲喜こもごも。
 失恋や破局を乗り越え、倒れても躓いても「タフに」生
きていこうとする女性たちの姿は、生命エネルギーそのも
のであり、その前にあっては、良くも悪くも男たちの影は
「希薄」だ。『パーマネント野ばら』は圧倒的に「女性」
の映画であり、それは映画の進行に伴って、より鮮明にな
っていく。

 幾多の愛憎劇の中で穏やかに綴られる、大学に勤めるカ
シマ(江口洋介)となおこの、ほのぼのとした恋愛。町の
女性たちの不毛といえば不毛な恋愛事情に比べれば、うら
やましいほど満ち足りて見えるのだが、しかし次第に彼女
は不安に苛まれ、やがて物語もそれまでとは違った意外な
面を見せ始める。同じ物語・同じ風景が「違う表情」に変
化し、それまでのドラマ全体の軽やかさ、穏やかさが根底
からひっくり返されてしまう。明るさと陽気さの裏に覆い
隠されていたシリアスな現実。

 穏やかなカメラの映像=視線は、「なおこの観た」主観
の世界であると同時に、なおこに優しく寄り添う人々の客
観的な視線でもある。そして観客は「二つの視点」の間を
風のように揺れることになる。しかし私たちがスクリーン
の外にいて、ただ「見守る」ことしか出来ない、というそ
のことに不意に気がついた時、言い様のない寂しさや哀し
さが重く胸を打つ。
 永遠の孤独がいつか永遠の素朴な愛によって救われるだ
ろうという、ささやかな「希望」が提示されるラスト。母
と娘、さらにその娘へとつながっていく愛情。それ故に、
菅野美穂と娘・畠山紬が連れ添う姿は愛おしく、この先の
幸福な未来を願わずにいられないのである。
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