【映画批評 過去記事から】
パートナーズ 盲導犬チエの物語■2010年/ビスタサイズ/119分
■制作:近代映画協会
監督:下村優
脚本:荒井晴彦、井上淳一
撮影:浜田毅
照明:長田達也
編集:渡辺行夫
音楽:根岸貴幸
出演:浅利陽介、大塚ちひろ(現・大塚千弘)
   近藤里沙、村田雄浩、川上麻衣子
   根岸季衣、熊谷真実、夏八木勲
   ヘレナ(盲導犬)


 生命のあるかぎり、希望はあるものだ。
         「Don Quixote de la Mancha」セルバンテス


「犬」が主役の映画は数々あれど、本作は盲導犬をモチーフ
としつつも凡庸な感動物語ではなく、そのタイトルが示すよ
うに、様々な形の「パートナー」の在り様を描いた群像劇で
ある。

 知人の死がきっかけで盲導犬訓練士学校に入学し、准訓練
士となった剛は、パピーウォーカー(盲導犬育成ボランティ
ア)の長谷川家の長女・美羽に育てられた「チエ」の担当に
なる。何の理想も目標もないままに訓練士となった剛と「ペ
ット代わりに子犬を育てたい」という軽い動機でチエを育て
た家族。出会いと別れ、それぞれの一喜一憂。やがて訓練の
末、盲導犬としてデビューしたチエは、事故による失明で自
暴自棄になったロックシンガー・真琴のパートナーに決まり、
剛とチエと彼女の新たな訓練が始まる。

 最初は全くバラバラな3つのエピソードを、子犬のチエの
存在がひとつに寄り合わせていく。その誕生から盲導犬とな
るまでの時間経過に沿って、並行して交互に綴られる物語が
次第に重奏的な展開を見せ始め、やがてチエの存在を「結束
点」として、大きく太い一つの物語へと収斂していくのであ
る。その中で、単なる「主従関係」から抜け出した、犬と人
との共存関係が模索され、それが人間同士の関係性(夫婦、
友人、恋人、仕事仲間)にも大きな変化が生み出される。

 特筆すべきは、作品の重要なポジションを担うチエの演技
的存在感で、撮影現場のスタッフワークが、もの言わぬ子犬
に演出意図に則ったアクションを与えることで、そこに「雄
弁さ」が生み出され、一瞬の動きを「演技」として切り取る
編集が、チエを過剰に「キャラクター」化することなく、き
わめて自然に「物語世界」に溶け込ませる。
 それは、障害者とともに日常の社会生活の中を生きていく
盲導犬の、理想的かつ常態的な姿を理解するための有効なメ
ッセージにもなっている。
 
 しかし映画『パートナーズ』は、その前提として「盲導犬
の育成と普及のための映画」という意図を含みながらも、堅
苦しい啓蒙色がきわめて薄い映画でもある。
 例えば、パートナー訓練を通して互いに想いを寄せるよう
になる二人。気弱な剛と気の強い真琴のコントラストが、普
遍=不変的な映画的魅力を生み、その恋愛エピソードを映画
の幹とすることで、作品のイメージはきわめて軽快で馴染み
やすいものになっている。
 やたら「感動的」に煽るような演出ではなく、ごく普通の
人々の喜怒哀楽を奇を衒わず実直に描くことで、観るものに
無理なく素直に感動を喚起させる、爽やかなエンタテインメ
ントになっているのである。

「希望」は人生最良の「パートナー」である。希望がある限
り、人生に終わりはないというメッセージ。この映画に出て
くる人々にとって、チエとの出会いが状況を変える大事なき
っかけだったように、パートナーは最も身近な「希望」であ
るだろう。       (天動説:映画批評 2011/10/9)

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