【映画批評 過去記事から】
黄金を抱いて翔べ■2012年/シネマスコープ/129分
■制作プロダクション:rktエンターテイメント
監督:井筒和幸
原作:高村薫
脚本:吉田康弘、井筒和幸 
撮影:木村信也
照明:尾下栄治
編集:冨田伸子
音楽:平沢敦士
出演:妻夫木聡、浅野忠信、溝端淳平
   桐谷健太、チャンミン(東方神起)
   青木崇高、中村ゆり、田口トモロヲ
   鶴見辰吾、西田敏行

●映画公式サイト→

大阪の街を舞台に繰り広げられる金塊強奪作戦、金塊に魅せら
れた男たちのノンストップエンターテインメント大作。
2012年11月3日(土)より全国ロードショー
★DVD&Blu-ray:2013/4/2発売


 大阪に本店をおくメガバンクの地下に眠る総額240億の
金塊。トラック運転手の北川(浅野忠信)は、この金塊の強
奪を計画、大学の同級生で裏社会の調達屋として生きる幸田
(妻夫木聡)を誘う。メンバーは、システムエンジニアの野
田(桐谷健太)、北川の弟・春樹(溝端淳平)、爆破のプロ
で韓国の工作員・モモ(チャンミン)、元エレベーター技師
のジイちゃん(西田敏行)の計6人。
 しかし計画を準備する彼らの周囲では、次々と予想だにし
ないトラブルが発生し、彼らの意外な過去や裏切りが浮上す
る。そんな中、はたして彼らはこの計画を完遂できるのか?

 無謀とも思える金塊強奪に挑む男たちの、計画実行の一部
始終を描く犯罪活劇。スペシャリスト数人がチームを組んで
難攻不落の標的を狙うという、近年の日本映画では久々の王
道のストーリーだが、『黄金の七人』のような軽快なスタイ
リッシュさではなく、登場人物の人間くささを濃密に描き出
す、手応えのある重量感で描かれる。

 細かい動機付けや状況説明より、「作戦遂行」の過程を全
面に押し出した作劇で、メンバーそれぞれの過去や現況の描
写も徹底的にドライ。過剰になりがちなところをきっぱり削
ぎ落とすショットの切れ味が、ある時はサスペンスを、ある
場面では深い情感を生み出す。
 しかし、そのタッチは「乾いて」いながら、どこか「濡れ
て」もいる。それは数滴の涙、滲む血、流れる汗、血の通っ
た生身の肉体が持つ「生命」としての潤いであり、乾いた心
や体に時折湧き出るように表出する。それが男たちの「人間
くささ」の源泉なのである。

 6人の男たちはそれぞれの理由と決意で計画に参加し、そ
れぞれが焦りや苛立ち、緊張感や不安感、後悔やためらいを
抱えつつ、止まる事のない全力疾走で突っ走っていく。単純
に割り切れない、どうしようもなく人間的で、複雑な感情を
常にはらんでいる彼ら。
 幸せな家庭を持ちながら無謀な計画に突き進む、妙にエネ
ルギッシュな北川と、裏社会を虚無的に生きながらどこか平
凡な生活に憧れも感じている(北川の家族を見つめる視線)
幸田の対比は、物語全体のドラマ的背骨にもなっている。
「イエス」か「ノー」か、「裏」か「表」か、メンバーそ
れぞれの命運が「弱さ」と「強さ」のどっちにひっくり返る
か。その待ったなしの二択の緊張感が画面からひりひりと伝
わってくる。

 クライマックス、とにかくここまできたら成功してナンボ
だ、といわんばかりに一気呵成に展開する金庫襲撃場面。度
重なるアクシデントと想定外の状況とが積み重なって、否応
なくハラハラさせる活劇の面白さが押し寄せる中、綿密に練
った割に、計画は意外と雑で行き当たりばったり、どこまで
も「映画」のように颯爽とは行かない。
 主人公たちが、慌てふためきながらも必死に奮闘する様は
シリアスな展開の中にあっても、どこか滑稽でそこはかとな
い可笑しさがにじみ出ていて、まさに井筒監督流リアリズム
の真骨頂といえる。

 息詰まる大混戦の末、彼らが手にしたのは「黄金」か、そ
れとも人生の「片道切符」か。どちらにしても最後のゲーム
に全力投球した彼らに「負け」はなかったのではないか。
 思えば6人には根本的に多少の差異はあるものの、「金」
そのものに対する欲が希薄である。(借金や分け前の話は語
られるものの、犯罪に加担する動機にはあまり結びついてい
ないように思える)それは、何重にも組まれた障壁に守られ
た金庫を破って金塊を盗み出す、その「行為」そのものに意
味があったからではないか、とも思える。
 鉄壁の囲いの中に封じ込まれていた「何か」を解放するこ
と。金塊はそのシンボルであり、男たちは「黄金」を介して
まさに「解放」されていくことになるからである。

 痛快というには苦く、痛切というにはタフな、ならず者た
ちの物語。ともあれ、映画『黄金を抱いて翔べ』は、近年稀
に見る、骨っぽい「男のドラマ」である。

(天動説: 2012/10/26 札幌共済ホール 試写会にて)

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