【映画批評 過去記事から】
ゲルマニウムの夜■2005/ビスタサイズ/107分
■制作プロダクション:荒戸映画事務所
監督:大森立嗣
脚本:浦沢義雄 原作:花村萬月 
撮影:大塚亮
照明:舘野秀樹
編集:奥原好幸
音楽:千野秀一
出演:新井浩文、広田レオナ、早良めぐみ
   木村啓太、大森南朋、津和孝行
   大楽源太、山本政志、三浦哲郁
   麿赤兒、石橋蓮司、佐藤慶


 教会の教護院に戻ってきた朧(ろう)は、そこで黙々と働
きながら、宗教を試すように「冒涜行為」を繰り返す。生き
ること、死ぬこと、苦しむこと。ゲルマニウムラジオのイヤ
ホンから聴こえてくる「囁き声」を聴きながら、かすかな希
望を感じるために、答えの出ない問いを続ける…
 神に殴りかかるかの如く、挑発的でアンモラルな世界。炸
裂しそうでしない感情のくすぶり方が、観るものを終始不安
にさせる。画面を「縦に割る」ような新井浩文の存在感が、
畏怖の対象から好感と共感の対象へと次第に移行していく映
画的な活力の凄さ。

 タイトルの「ゲルマニウム」とは、希少金属ゲルマニウム
製のダイオードを用いた鉱石ラジオを指す。構造がシンプル
で、微弱な信号でも受信できる特性があり、電源がなくても
聴くことができる。
 主人公の朧は、そのラジオを夜な夜な手にし、ささやかな
音を聴く。空中を飛び交う目に見えない電波、その雑音の中
から「音声」を選びだすラジオ。イヤホンを通じて流れる音
が「神の声」だとするアイデアは秀逸だ。

 宗教などの「導き」がなくても自分は生きている。その真
理に突き動かされる青年・朧。やがて、生と死、愛と欲、清
濁のカオス(教会を取り囲む泥と雪の対比が、それを象徴的
に示している)の中から、ある純粋な「美しさ」が浮上して
くる。あたかも、「雑音」の中から、不意に美しい「音楽」
がチューニングされるように。そして彼の中の「夜明け」も、
まさにラジオのように、不意にチューニングされるのだ。
 ラスト、「ぽっかり開いた穴から首を出した」ような一抹
の明るさに、そこはかとない希望が感じられる。
                 (天動説 2011/11/03)

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