【映画批評 過去記事から】
シャブ極道■1996/ビスタサイズ/164分
■制作:大映、HEISEIプロクション
監督:細野辰興
原作:山之内幸夫
脚本:成島出
撮影:山本英夫
照明:安藤和也
編集:井上治
音楽:薮中博章
出演:役所広司、早乙女愛、渡辺正行
   菅田俊、本田博太郎、高橋明
   春やすこ、白石ひとみ、白石久美
   藤田傳


 神戸の街。酒もタバコもやらないが、クスリには目がない
無鉄砲なヤクザ・真壁。組長の多額の借金により解散に追い
込まれそうな組を救うために、組長を勇退させて自ら後継者
になった彼は、それまでのシノギを捨て、クスリの密売に力
を入れ始めるのだが…
d(>_<  )VeryGood!!(2010/12/14)


 「シャブ」とは、言うまでもなく「覚せい剤」の隠語であ
り、習慣性の依存状態を引き起こすことから「一度やったら、
骨の髄までしゃぶられる」ということからそう呼ばれるよう
になったという説が一般的だが、元々は「味噌汁」を指す隠
語であったという。

 役所広司演じる主人公の真壁は、まさに三度の食事に欠か
さず「味噌汁」を飲む如く、クスリに執着するのだが、キワ
ドいそのタイトル・イメージとは違って、薬物中毒の陰鬱な
イメージはほとんどない。なぜなら本作における「シャブ」
は、その「麻薬」としての実体としてより、作品の本質を象
徴するキーワードとして存在するからだ。『シャブ極道』と
は、「シャブ中毒の極道」ではなく、「いつも気分を高ぶら
せてくれる奴・一度つき合ったら離れられない男」を意味し
ている。

 真壁は常に自らの欲望に忠実に突っ走って行く。過剰なま
でのエネルギーをギラギラと放ち、その破天荒な言動のわり
に、不思議とまったく嫌悪感を感じさせない人間性と、呆れ
るほど強烈なプラス思考で、映画を強引なまでにプラス方向
へと牽引していく。迷いも焦りも最終的にはその情熱的な活
力によって上塗りされていく。その強烈なエネルギーの前で
は、真壁がヤクザかカタギか、という線引きも意味をなさな
い。そして真壁自身もその線を越えて疾走していく。

 古今のヤクザ映画の面白さ、そのもっとも脂の乗った部分
を青春・恋愛映画的なテイストで煮込みつつ、ユーモアとペ
ーソスもふんだんに盛り込んだ本作は、昭和〜平成にまたが
るクロニクル的な構成も面白い、2時間44分の快作。とに
かく目が丸くなるほど、滅法面白い。
 前述の役所広司はもちろん、真壁に付き添う肝の座った極
道の妻・鈴子を早乙女愛、頼りになる参謀格の弟分・下村を
渡辺正行(つい、コントのイメージを連想してしまうが一切
ギャグはなし)がそれぞれ好演している。

 裏切りと報復を突破し、再びゼロからの逃避行へと飛び込
んでいく真壁と鈴子。アメリカンニューシネマ的な、ぬけぬ
けとしたラストもすこぶる痛快だ。
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Name:竹澤収穫



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