【映画批評 過去記事から】
春との旅■2010/ビスタサイズ/134分
■制作:ラテルナ、モンキータウンプロダクション
原作・脚本・監督:小林政広
撮影:高間賢治
照明:上保正道
編集:金子尚樹
音楽:佐久間順平
出演:仲代達矢、徳永えり
   香川照之、戸田菜穂、大滝秀治、菅井きん
   田中裕子、淡島千景、柄本明 他


 七十四歳の老漁師・忠男は孫娘・春との二人暮らし。失職
したことで東京に働きに出ようと考えた春が、足の不自由な
忠男を慮って口にした一言がきっかけとなり、老いた忠男の
受け入れ先を求めて、長年疎遠になっていた姉兄弟たちを訪
ねる旅に出る二人だったが…。
(。・ˇ_ˇ・。)ムム…(2011/10/15)
 映画は冒頭、玄関から飛び出し、取り憑かれたように歩き
出す忠男と、困惑しつつその後を追う春の姿から始まる。細
かな状況説明は追々、二人の言動の中に描かれ、何処かへ向
おうとする二人の姿と、行く先々で相対するそれぞれの切実
なドラマを追うロードムービーである。
 二人の旅は、互いの気持ちがズレたままの、どこかギクシ
ャクしたもので、足の不自由な老人と、歩き方がどこかおぼ
つかない孫娘の、画面上の「動き」そのものがそれを具体的
に明示する。
 食事中も、移動中もあるいは宿に落ち着いてからも二人は
視線をまったく合わそうとしない。どこか自分勝手なところ
がある忠男と、心配しながらもその言動に呆れる春の関係は
追いついては追い抜かれ、立ち位置が逆になったりする。

 不満と苛立をぶつけ合いながらも、疎遠だった親族を訪ね
歩く祖父とその孫娘。しかし、行く先々での祖父とその兄弟
との邂逅は、それぞれの事情の前に現実的に折り合わない。
 一見冷たく見放したように見える兄姉たちが別れ際にふと
見せる心情がドラマを厚くする。二人は言葉もなく、次第に
連係するようになり、始めはギクシャクとした二人の旅も、
次第に穏やかで優しいものに変化していく。
 物語の最高潮としてのそば屋のシーンに満ちるエモーショ
ンの素晴らしさ。物語の中盤におけるラーメンを食べるシー
ンと比較すれば、よりクッキリとそれが浮かび上がる。
 しかし、そうであればこそ、やはり二人はあの「家」まで
辿り着くべきだったのではないか。その一点が惜しい。
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