【映画批評 過去記事から】
のぼうの城■2012年/シネマスコープサイズ/145分
■制作:C&Iエンタテインメント、アスミックエース・エンタテインメント
監督:犬童一心/樋口真嗣
原作・脚本:和田竜
撮影:清久泰延、江原祥二
特撮監督:尾上克郎
照明:杉本崇
美術監督:磯田典宏 美術:近藤成之
編集:上野聡一
音楽:上野耕路 主題歌:エレファントカシマシ
出演:野村萬斎、上地雄輔、榮倉奈々、山田孝之、成宮寛貴
   山口智充、平岳大、中尾明慶、芦田愛菜、尾野真千子
   中原丈雄、前田吟、鈴木保奈美、西村雅彦、平泉成
   夏八木勲、市村正親、佐藤浩市

映画公式サイト→
 戦国末期。領民から、でくのぼうを揶揄した「のぼう様」
と呼ばれながら、誰も及ばぬ「人気」で人心を掌握する城
代・成田長親は、豊臣秀吉の命により2万の軍勢を従えて
迫りくる石田三成軍に対して徹底抗戦を宣言するが、忍城
の兵力はわずか5百騎余り。誰の目にも勝敗は明らかに見
えた戦(いくさ)だったのだが…
d(>_<  )Good!!(2012/11/2 札幌ユナイテッドシネマ)


 戦国の世を舞台に、史実を元に描くエンタテイメント時
代劇。「窮鼠猫を噛む」の例えの如く、まさに絵に描いた
ような「多勢に無勢」を奇策でひっくり返す痛快さ、まず
は、とにもかくにも面白い「大活劇映画」であることに間
違いはない。

 冒頭から本作で目を引くのは、その圧倒的な画面の広さ。
ロケーション撮影、広大なオープンセット、VFXの相乗
効果が、あるときには国の豊かさを表現し、ある時は緊迫
感あふれる戦場として力強く存在する。
 犬童一心、樋口真嗣両監督による二人監督体制は、映像
的なバラつきを生むのではと危惧されたが、演出作業を分
担せず、「どのシーンも二人同時に演出した」というその
画面にはそれぞれの持ち味が巧く活かされていて、繊細さ
とダイナミックさとが渾然となった、快活な躍動感が生み
出されている。

 本来、命がけの血なまぐさい戦(いくさ)の物語である
からには、かなり殺伐とした描写も少なくないが、しかし
それぞれの義をもって堂々と戦う姿=フェアプレイの武士
道精神が、ルールの上でベストを尽くすスポーツにも似た
清々しさをこの「戦場」に与えている。そして、戦わざる
を得ないのであれば、守るべきもののために全力で戦う、
ということが全編に貫かれている。

 ともあれ、合戦シーンの迫力はまさに目を見張る出来映
えで、物量作戦で城を落とそうとする石田軍と、地の利を
活かして迎撃・善戦する成田軍の攻防戦の行方と顛末、激
突する両陣営の間で繰り広げられる、あの手この手の戦術
の面白さはリアリティを感じさせつつも奇想天外で、思わ
ず手に汗握る。
 一進一退の戦局の末、石田軍はついに忍城に対して切り
札ともいうべき「水攻め」を敢行するのだが、日本映画な
らではの特撮技術を駆使したこの水攻めシーンはまさに圧
巻。ここではリアリティよりもその迫力のスペクタクルを
圧倒的に展開することに重きが置かれ、前述の「画の広さ」
の効果が遺憾なく発揮されている。
 そしてドラマ的にも、ここで大きく「うねる」ことにな
る。「のぼう」長親もまた、ある「信念」のもとに「最後
の策」に打って出るのである。


 映画『のぼうの城』で特徴的なのは、「天衣無縫な城代
・成田長親が、うつけ者を装いつつ奇抜な策略を繰り出し
て敵を翻弄する物語」…かと思いきや、トップに座ってあ
れこれ部下に指図するというイメージでは全然ない、とい
う点。戦術・奇策を提案し実行するのはその家臣たちであ
り、長親はハラハラしつつ、しかし全権を持ってそれを見
守る、という図式なのだ。全部任せっきりのようだが、存
外、頼れる「真のリーダー」像というのはこういうものな
のかもしれない。
 その意味では、急遽大役に抜擢されたという点で、石田
三成も長親と同様の立場なのだが、その対照的な有り様も
また、本作のドラマを面白くしている一因といえるだろう。

 そしてそんな相互関係の中で動く登場人物たち、敵味方
問わず、そのキャラクターの豊かな存在感が本作の大きな
魅力でもある。戦(いくさ)が当たり前の時代の中を、そ
れでも明るく生きている人々。俳優陣の好演が随所で光る。
 野村萬斎の飄々とした演技と身のこなしの軽妙さは観客
を惹きつけて止まないし、長親の言動に呆れながらも支え
続ける利英=佐藤浩市の気性の良さも心地よい。成宮寛貴
・山口智充のでこぼこコンビぶりも実に楽しい。
 一方、武士の心意気と礼を重んじる石田三成=上地雄輔
が見せる素直さと、それに批判的な大谷吉継=山田孝之は、
敵方ながらその心情を察することが出来て憎めない。
 また、甲斐姫・榮倉奈々、村の娘・芦田愛菜の愛くるし
さと凛々しさは、忍城陣営シーンの猛々しさを何度となく
丸くさせる。


 映画『のぼうの城』はそんな愛すべき彼らの「決断と決
意」のドラマである。忍城攻略の指揮を引き受ける三成、
徹底抗戦を決める長親、腹を括る家臣、戦いを目前に胸の
内を告白する靭負(ゆきえ)、戦いを前に村人をまとめる
たへえ、武士に反抗的で一旦は村を離れるかぞう。そして、
「行く末」を決意する甲斐姫…
 人が何かを決断する時、そして自分がやるべきことと望
むことにどう向き合い、折り合いをつけて行くかという自
己の内面でのドラマが、敵味方が激しくぶつかり合うスト
レートな戦いのドラマにリンクしているのである。

 嵐のような戦いのあと、彼らが迎える「未来」に思いを
馳せ、そして言いようの無い「別れ難さ」がつのる中、物
語のラストをがっちり支える骨太の主題歌が流れるエンド
ロール。そこで、たくましく生きた人たちとその歴史に連
なっている現在(いま)、その二つの時間にさらなる思い
を重ねる時、胸の奥に新たな感動が沸き上がるのを覚える。
 縁があったら、またいつかどこかで彼らに会いたい、と
そう思わずにはいられない。
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