【映画批評 過去記事から】
秘密■1999/ビスタサイズ/119分
■制作:フィルムフェイス
監督:滝田洋二郎
脚本:斉藤ひろし 原作:東野圭吾
撮影:栢野直樹
照明:長田達也
編集:冨田功
音楽:宇崎竜童
出演:広末涼子、小林薫、石田ゆり子
   金子賢、伊藤英明、篠原ともえ
   岸本加世子


 バスの転落事故に遭遇してしまった杉田平介の妻・直子と
娘の藻奈美。奇跡的に意識を取り戻した藻奈美だったが、そ
の身体には、死んだ直子の人格が宿っていた。平介は戸惑い
ながらも、「夫婦」でありながら世間的には「父娘」という
奇妙な生活を始めるのだが…

 「娘」と「妻」へのそれぞれの愛情を「一人の女性」に対
して抱かざるをえなくなった平介の姿を一見コミカルに捉え
つつ、「外見」と「内実」のギャップが生み出す幾重にも入
り組んだ関係性のねじれが、「恋愛コメディ」にも「大人の
恋愛物語」にもなりうるドラマの微妙なボーダーラインとな
って、映画を終始不安定に揺り動かしていく。

 見た目には「母(妻)亡き後、残された父と娘の人生」と
いうドラマが進行しながら(劇中でも二人は対外的にそう見
えている)、それと表裏一体となった「娘を亡くした夫婦の
人生」が同一時空間で展開する「二重性」の面白さと、そこ
に立ち上がってくる官能性。滝田監督流のさらりとした平易
な映像が、緩やかにねじれた二人の日常をユーモラスに活写
する。
 それでいて、画面上ではほとんど不在のはずの岸本加世子
の「存在感」が際立っているのもスゴいところで、とりわけ
灯台のシーンでの、同ポジションからのショットの反復にお
ける演技、そのキャラクターの違和感のなさが素晴らしい。
 そしてもちろん、ちょっとしたニュアンスの表現で2つの
人格を行き来する広末涼子の力量にも、あらためて目を瞠ら
ずにはいられない。時折ふわりと大人の表情が浮かぶあたり
には、思わずドキリとさせられる。

 映画終盤、ねじれた日常が元に戻り、「二重生活」の物語
に終わりが告げられたとき、平介の問いかけを否定も肯定も
せずに微笑む「彼女」は、はたして本当に「直子」だったの
か、それとも「藻奈美」だったのか。あるいは、本当は最初
から藻奈美は「藻奈美」のままだったのかもしれない。
 ラスト、その真偽を「秘密」のベールに包んだまま、幸せ
の鐘が鳴リ響く。        (天動説 2010/12/20)


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