【映画批評 過去記事から】
 この夏の間にいろいろ観た映画について短くコメントする
寸評企画です。ツイッターで書き留めていたキーワードを下
敷きに、加筆修正してまとめています。(※後日、個別の記
事にブローアップするかもしれません)
 通常のエントリ記事では、評価したい作品以外は取り上げ
ていませんが、ここではできるだけ観た映画をいろいろ取り
上げみたいと思います。



小川の辺『小川の辺』(11)
■監督:篠原哲雄 ■脚本:長谷川康夫、
    飯田健三郎 ■編集:奥原好幸
■出演:東山紀之、菊池凛子、勝地涼

 ある日、藩から上意討ちの命を受けた朔之助、
だがその相手は妹・田鶴の夫だった。幼いころか
ら兄弟同様に育った新蔵を伴っての道中、彼らの
胸を去来するのは、気が強く剣術の使い手でもあ
る田鶴の面影だった……
 武家社会の不条理なルールに翻弄される兄妹の運命を描く物語だが、
そのわりに妹の描写が圧倒的に少ない上に、幼馴染みである若侍の視
点、さらには幼少期の回想シーンがこれに加わることで、物語の着地
点がぼやけてしまい、全体の流れも今ひとつすっきりしない。
 主人公のキャラクターも、ただひたすら「妹の夫を斬る」という藩
命をクールに全うするだけの、情に薄く殺伐とした人物にしか見えず、
心象風景的に山川草木が映し出された映像の美しさも、何かとってつ
けたように感じてしまう。総じて、ほぼ同スタッフの『花のあと』よ
りは映像的にまとまりが良いものの、深い感動を得るには『山桜』に
及ばなかった、という感が。 …7/4

魔女の宅急便『魔女の宅急便』

(2011/07/08)



SP野望編『SP 野望編』(10)
■監督:波多野貴文 ■原案・脚本:金城一紀
■編集:穂垣順之助
■出演:岡田准一、真木よう子、堤真一 他
 六本木で勃発するテロ事件。犯人たちの魔の手
は警護課第四係に向けられていく。そんな中、チ
ームリーダー・尾形に対する疑心をぬぐい切れな
い井上は……

 TVシリーズの映画版。ストーリーは完全な続編(さらに前後編)な
ので、TVを未見の人にはやや不親切な作り。アバンタイトルでこれま
での物語をまとめるなど、工夫が必要だったのではないだろうか。四係
メンバーや香川照之演じる敵役のキャラクターが良いだけに惜しいとこ
ろ。その一方、岡田准一を筆頭にしたアクションシーンは今までにない
迫力ある出来映えで見応えあり。邦画娯楽アクション映画の新たな突破
口として認識されてほしいと思う。……7/20



猿ロック『猿ロック THE MOVIE』(10)
■監督:前田哲 ■脚本:長谷川隆
■編集:高橋幸一
■出演:市原隼人、比嘉愛未、高岡蒼甫、芦名星
    小西真奈美 他
 鍵師の猿丸、通称サル。ある依頼で金庫を開け
て、警察の機密事項の入ったトランクを手にして
しまった彼は、それを取り戻そうとする者たちや
警察関係者に追われるハメになる…。


 テレビシリーズの延長線上にあるため、本作も単独では人物設定など
に判りづらいところが多々あるが、それよりも「警察組織内部の隠蔽工
作」にまつわる物語の「重さ」が、本作の持つ本質的な「軽妙さ」とう
まく馴染まず、乖離していることの方が重大な問題ではないかと思う。
 「映画の枠」の中に入れたものの、キャラクターが「テレビ的」なま
まなので、そのアンバランスな部分が映画全体の完成度を弱めてしまっ
ているのではないか。もっと「素材」を映画的に料理し直しても良かっ
たのではないかという気がする。「THE MOVIE」というのはそういうこ
とだと思うのだが。 …7/22



苦い蜜『苦い蜜~消えたレコード』(10)
■監督・脚本:亀田幸則
■編集:張本征治、邉見和子
■出演:金子昇、池上季実子、田中健、中西良太
  島田順司、高橋ひとみ、鎌苅健太、渋谷琴乃
  犬塚弘
 盗まれたビートルズ幻の名盤を巡る推理。交錯
する14人の容疑者たちの記憶と思惑。40年前
の”苦い想い出”が導いた解決の糸口とは。

 善人も悪人もなく、殺人も起こらないミステリは、果たして成立する
だろうか? 本作は舞台演劇のようなルックスでみせる群像劇で、登場
人物たちの過去の記憶を切り崩しながら事件の真相を読み解いていく面
白さは、なかなかスリリング。設定やセリフ回しなど、演出が全体的に
古めかしい印象で、ややフラットな画面は映画としての映像的魅力に乏
しい感があるものの、金子昇の探偵キャラクターなど捨て難い趣きも。
…7/22



サマーヌード『サマーヌード』(02)
■監督・脚本:飯塚健
■編集:掛須秀一
■出演:野波麻帆、古屋暢一 ほか
 沖縄県の石垣島、8月31日。父の命日で帰郷
していた東京の医大生・夏樹は、青年プーと偶然
出会い、一日を過ごす。2人の行動を軸に、島民
たちそれぞれが経験する夏の一日の喜怒哀楽に満
ちた出来事を描く群像劇。

 『彩恋』の飯塚健による初監督作だが、ストーリーも個々の描写もか
なり雑然としすぎていて、面白さがスッキリと弾けず、複数のドラマが
クライマックスでひとつに収束するはずの作劇も、その効果を十二分に
発揮されないままに終始してしまう。劇中の野波麻帆のセリフを借りる
なら、観ている方も「どうしたら良いか判らない」という印象が残った。 
……7/23


みんなはじめは『Theショートフィルムズ』
  『みんな、はじめはコドモだった』
(08)
■監督:阪本順治、井筒和幸、大森一樹、李相日、崔 洋一
■出演:佐藤浩市、光石研、佐藤隆太、高岡早紀、
    藤竜也、宮藤官九郎、小泉今日子、樹木希林 他


 錚々たる監督が撮った「子供」をテーマにした5本立てオムニバス映
画。それぞれの監督らしさが出ていて興味深いが、とりわけ大森一樹監
督・脚本の『イエスタディワンスモア』(編集:山本浩史)が良かった。
 父の死後、ひとりでめし屋を切り盛りする母を助ける為に、玉手箱の
力で25歳の青年にしてもらった10歳の少年・将太が、子供の自分が
誘拐されたことにして、その身代金をを稼ぐために店で働きはじめるが、
そんなこととは知る由もない母は、青年の姿の将太に心が揺れ始める…
というファンタジックな時代劇。
 時代劇にタイムスリップものをもってくるという、いかにも大森監督
らしい趣向の物語で、何より高岡早紀の存在感が素晴らしい。子供が誘
拐されたにしてはずいぶん呑気な…という気がしないでもないが、それ
を意識させない絶妙なリズムの作劇で、途中からどんどん物語に引き込
まれてしまう。クライマックス、ワンショットで鮮やかに決めてくれる
結末に、じんわり感動させられる好篇。 …7/23



アンダルシア『アンダルシア 女神の報復』(11)
■監督:西谷弘 ■脚本:池上純哉
■編集:山本正明
■出演:織田裕二、伊藤英明、黒木メイサ 他
 スペイン北部の小国で日本人の投資家の遺体が
発見される。調査のためスペインに向かった外交
官の黒田康作は、何者かに狙われる遺体の第一発
見者・新藤結花を保護するが、インターポール捜
査官の神足は捜査情報を隠そうとする。黒田は事
件の背後に隠された真相を追うが…


 『アマルフィ 女神の報酬』に続く第2作。 前作が直球のエンターテ
イメント・スタイルだったのに対して、本作ではより洋画的な乾いた画
作りにより、質感と量感を感じる作品になっている。現地に深く入り込
んだ効果的なロケーション撮影、スリリングなアクション、緊迫感のあ
るサスペンスフルな作劇に、恋愛映画的なロマンスの香りも加えつつ、
最終的には変則的なバディものともいえる男の友情ストーリーに帰結す
るドラマは見応えあり。冒頭とラストにおける夏八木勳のシークエンス
も良かった。  ……7/25

(天動説/映画批評 2012/00/00)

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