【映画批評 過去記事から】
KOTOKO■2011年/アメリカンビスタ/91分
■制作プロダクション:海獣シアター
監督・企画・製作・脚本・編集:塚本晋也
企画・原案:Cocco
撮影:塚本晋也、林啓史
整音・音響効果:北田雅也
照明:林啓史
特殊メイク・特殊造型:花井麻衣
美術・音楽:Cocco
出演:Cocco、塚本晋也

【映画公式サイト→】


 映画『KOTOKO』は一人の女性の「戦いの記録」である。
彼女は誰にも理解してもらえない状況の中で、孤独に闘い続
ける。「戦場」に立つ彼女にあるのは、両手に抱きかかえる
愛する我が子と、唇が奏でる歌だけである。

 感受性が強く、目の前の「世界」が二つにダブって見えて
しまう琴子は、歌を歌っている時だけは心身のバランスがと
れ、穏やかな気持ちでいられるが、愛する我が子を守りたい
と願うあまり、次第に強烈な強迫観念を生み出してしまうよ
うになる。自傷行為を繰り返し、精神的に不安定な状態が続
く琴子。ついには幼児虐待の嫌疑をかけられて、息子と別れ
て暮らさざるを得なくなってしまう琴子。
 そんな中、琴子の歌う姿に魅了され、献身的に彼女に尽く
す小説家の田中との出会いによって、琴子の内側に潜む不安
や暴力性、破滅性は薄らいでいき、少しずつ穏かな生活を取
り戻していくのだが…

 彼女が観る光景・体験したことは、どこまでが現実でどこ
からが幻覚なのか。我が子を守りたいが故に、「世界」から
孤立し、無常観に心を囚われてしまう琴子。塚本監督独特の
「殴りつけるような」映像の迫力と「撫でる」ような優しさ
の描写とが緩急のリズムとなって画面に溢れる中、心の境界
線のギリギリを彷徨う彼女を、あらゆる感情の坩堝となって
魂の奥底から演じ切るCoccoの気迫が、観るものを圧倒
する。
 塚本監督の『鉄男』では、男が不条理に「鉄に変異」して
いくが、琴子もまた「変化」する。無垢な少女から、繊細な
女性へ。そして激情を引き金にして、琴子は次第にたおやか
な「母」に変化していくのだ。破滅や破壊のためではなく、
世界と調和するために。
 負傷しながらも戦場から帰還した琴子。静謐なるラストに
満ちたささやかな幸福感は、まるであの「歌声」のように心
地良い。
                 (天動説 2012/12/24)

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