【映画批評 過去記事から】
忍者狩り■1964年/シネスコサイズ/モノクロ/87分
■制作:東映
監督:山内鉄也
脚本:高田宏治
撮影:赤塚滋
照明:金子凱美
編集:宮本信太郎
音楽:津島利章
出演:近衛十四郎、佐藤慶、山城新伍
   河原崎長一郎、田村高廣
   北条きく子、天津敏


 三代将軍・徳川家光は幕府体制を不動のものにすべく、積
極的に外様大名を取り潰していた。その頃、伊予松山二十万
石の蒲生家では藩主が病死。蒲生家は嫡子・種丸の家督相続
を願い出て、将軍家のお墨付きを下付される。
 幕府重臣・大和守は、その儀式当日までにお墨付きを奪還
するよう闇の蔵人率いる甲賀忍者に密命を下す。一方の蒲生
家城代家老・土佐は幕府の腹を見抜き、五郎左衛門、八右衛
門、新蔵、弥次郎の四人に忍者狩りの命を下す。
d(>_<  )Good!!

 1963年を軸に連作された東映の集団抗争時代劇ものの系列
に属する一本。そのドラマは驚くほどに冷徹で、血も汗も涙
も、流れる暇もなく乾き切ってしまうような壮絶な描写の連
続には、虚を衝かれるばかりだ。

 個の意識を捨て去り、目的遂行の為に「群体」となって執
拗な攻撃を仕掛けてくる甲賀忍者、それを迎え撃つ4人の浪
人。そのリーダー格、近衛十四郎演じる五郎左衛門は、かっ
て蔵人との闘いに破れ、主家を失ったことから甲賀への憎し
みが異常なまでに強い。それゆえ、彼が実行する防衛策は一
切の手加減や容赦のない非情極まリないもので、自陣の蒲生
家からも反感を買うほどだ。
 家督相続を巡って繰り広げられる策と策の駆け引き、命を
張った剣と剣のぶつかりあい。その不条理な現実の中で、ひ
とりまたひとりと倒されていく仲間とその無情な死に様。し
かし五郎左衛門の豪剣は、そこに生ずるはずの情をも斬り捨
てていく。その結果、当然ながら物語からは「ヒロイズム」
的な痛快さは次々に剥がれ落ちていき、本来あるべき「敵味
方」の対決図式すら存在が危うくなっていく。そこにはもは
や主人公への「感情移入」などはなく、この事態の推移をた
だ「終焉」の時まで見つめ続けるしかなくなっているのであ
る。
 クライマックスでは、藩主の葬儀の最中、霊廟の中という
「死の世界」を象徴するかのような場所で、武士の義も忍者
の掟もなく、ただただ生きるか死ぬかの闘いが繰り広げられ
る。その息を飲む凄まじさは、闇の中、わずかな光だけが人
物を照らし出すモノクロ画面のコントラストによって、より
鋭く強烈に目に飛び込んで来る。それは、「映画的興奮」を
超えて観る者の中をただただ圧倒的な勢いで突き抜けてゆく、
狂暴なる「嵐」のようである。

 殺戮の結果としての「死」しか残されていないラストの虚
無感。嵐の過ぎ去ったあとに、まさに憑物が落ちたかのよう
に取り残された五郎左衛門は、はたしてこの戦いに「生き残
った」のか、それとも「死に損なった」のだろうか。
 東時代劇から任侠映画への東映転換期に生まれた本作は、
明朗なるチャンバラ時代劇そのものの終焉を暗示しているか
のようである。
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