【映画批評 過去記事から】
遺体■2012年/ビスタサイズ/105分
■制作プロダクション:FILM
監督・脚本:君塚良一
原作:石井光太『遺体 震災、津波の果てに』
撮影:栢野直樹
照明:磯野雅宏
美術:山口修
編集:穂垣順之助
音楽:村松崇継
出演:西田敏行、緒形直人、勝地涼、國村隼
   酒井若菜、佐藤浩市、沢村一樹、佐野史郎
   志田未来、筒井道隆、柳葉敏郎
【映画公式サイト】


 2011年3月11日、東日本大震災。未曾有の災害で多くの死
者・行方不明者を出した岩手県・釜石市。発見された遺体は、
次々と仮設の遺体安置所に運ばれるが、その検死作業にあた
ったのは、同じ地元の医師や歯科医師たちだった。
 定年後、地区の民生委員として働いていた相葉常夫(西田
敏行)はかつて葬祭関連の仕事についていた経験を活かして、
遺体安置所の世話役として働くことを決意。突然の「死」の
現場に直面し混乱する市職員や関係者を少しずつ動かしてい
く。
d(>_< )Good!!(天動説 2013/03/04 ユナイテッドシネマ札幌2)


 東北大震災直後の岩手釜石、仮設の遺体安置所で死と向き
合う人々の10日間を描く。圧倒的に不条理な現実の前に無
力感を感じつつも、ただ自らが「やれること」を、その人な
りの立ち位置でやり続けようとする「闘い」の記録。

 震災前の町の人々を活写するシークエンスが、実は(当然
のことだが)「震災後」に撮られているということに、胸を
打たれるが、その矢先、一転して場面は「震災後」へと移る。
 遺体安置所のロケセット、美術のリアルさに、製作者の真
摯な思いと強い覚悟を感じるが、綿密な取材に基づく実際の
エピソードを再現するベく、怯まずに挑んだ俳優陣も素晴ら
しい。
 西田敏行はじめ、佐藤浩市、柳葉敏郎の抑えに抑えた演技
の深さが太いタテ糸なら、厳しい状況の中、やれることを模
索する筒井道隆、自分を見失ってしまう勝地涼 自分を責め
て泣き崩れる志田未来など、若い職員たちの心の動揺がヨコ
糸となって、ドラマを厚く織り上げていく。
 酒井若菜の胸を突くような悲しみ、小橋めぐみの「化粧」
のシーンの微笑ましさ、そしてあまりの惨状を目の前に、読
経の声が詰まってしまう國村隼など、その気迫に満ちた迫真
の演技に込められた思いは「演技」を越え、スクリーンを越
えて胸に響いてくる。

 無慈悲な自然の脅威に翻弄されつつ、命に対する敬意と不
屈の魂をもって現実に踏みとどまり立ち向かう人々。こんな
に奥歯を噛み締めて観た映画はかつてなかったと思う。
 ドキュメンタリやニュース報道では追い切れない、だから
こそ見過ごしてはいけない「震災の現実」を伝える本作は、
劇映画としての「フィクション」の「力」を強く感じさせる
一作である。

ドキュメンタリー雑誌『neoneo』公式サイト
【Report】映画『遺体 明日への十日間』
      石井光太(原作)×君塚良一(監督・脚本)対談
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Name:竹澤収穫



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