【映画批評 過去記事から】
蛇イチゴ■2003/ヨーロッパビスタサイズ/108分
■制作:テレビマンユニオン
監督・脚本:西川美和
撮影:山本英夫
編集:宮島竜治
音楽:中村俊

出演:宮迫博之、つみきみほ、平泉成
   大谷直子、手塚とおる、絵沢萠子
   寺島進、蛍原徹、笑福亭松之助

 

 一見、ごく普通の家庭である明智家の人々は、実はそれぞ
れに鬱屈した思いを抱えていた。やがて、次第に家族関係に
軋轢が生じて来た時、曰く付きの兄が何年かぶりに家族の前
に現れる。

 日本全土の野原などに広く自生する「蛇イチゴ」は、あま
り食用としては好まれず、あまつさえその名前から「毒」が
あるのでは、という誤解も多いという。それは、どこか「人
間」にも通じるところがあるのではないだろうか。

 ずる賢い小悪党ながら、人が良くて大らかな兄と、聡明で
堅実的な性格ゆえに家族の中で逆に「浮いて」しまう妹。か
なりブラックコメディ的な世界観だが、そこから微妙にズレ
る感覚が面白い。軽薄さとシリアスさが同居する宮迫博之は、
芸人だから基本的に芝居が出来るというレベルを超えて素晴
らしい存在感。一方、急転直下の状況変化に翻弄されながら、
自分勝手な兄をどこか憎み切れずにいる妹の内面を、つみき
みほが力みのない演技で表現する。

 本当のことは誰にも判らないとしても、判ろうと努めるこ
とは出来るかもしれない。ラストショットのきらきらとした
蛇イチゴが、鮮やかに記憶に残る。             

(天動説:2010/10/21 )


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