【映画批評 過去記事から】
■2013.03.26/NHK/22:00-23:15
■制作:テレビマンユニオン、NHKエンタープライズ
演出:岸善幸
原作:某ちゃん。
脚本:一色伸幸
撮影:夏海光造
音楽:松本俊明
出演:刈谷友衣子、吉田栄作
   リリー・フランキー、安藤サクラ
   新井浩文、豊原功補、西田尚美
   山本浩司、藤原薫、夏居瑠奈 ほか

【NHKドラマサイト→】


東日本大震災の被災地・宮城県女川町に実在する「女川さい
がいFM」を題材として、被災地に生きる女子高生と、彼女
を見守る大人たちが織りなす青春ドラマ。
 震災から10ヶ月。仮設住宅に引きこもる女子高生、通称
「某ちゃん」(刈谷友衣子)。彼女を気にかける兄貴分の國
枝(吉田栄作)は、半ば強制的にFM局の活動に参加させる。
 しかし、ほとんど何もしゃべれない、何も伝えられない某
ちゃん。落ち込む彼女だったが、大好きなロックミュージッ
ク、正直な思いを綴るブログをバネに、「ラジオの持つ力」
に目覚め、自分自身を取り戻していく。
d(>_< )Good!!(2013/03/26)


 気軽に「良いドラマだった」と言うのが少々憚られるほど、
痛烈なメッセージが込められていて、うすらぼんやり生きて
るような身には、胸に深く突き刺さる内容だった。正直なと
ころ、多彩なキャストに惹かれて観始めたのだが、そういう
レベルで語り終えていいような作品ではない。

 ドラマ『ラジオ』を観て思うことは、「フィクション(物
語)の力」は強い、ということである。
 実際の被害状況(まだ復興もままならない現実)を背景に、
理不尽な現実に翻弄される人々の切実な日常が、まさに「日
常」そのものとして突きつけられる。リリー・フランキー演
じる飛松を巡るエピソードの数々が胸に沁みる。
 確かに事実をダイレクトに伝える「ドキュメンタリ」は圧
倒的な力を持っていると思うが、その「真実」のエッセンス
を抽出し、磨き上げる「フィクション」という手法は、メッ
セージをより広範囲に浸透させる力を秘めているような気が
するのである。それこそが「物語」と様式が、遥かな昔から
現在まで、時代や国や媒体を超越して存続してきた理由なの
ではないか。

 ドラマは、「震災」「復興」をテーマにしつつも、物語そ
のものは某ちゃんの自立、心の復興を描く青春映画となって
いるのだが、その真骨頂は、某ちゃんが東京の学校へ進学す
べく、町を離れるラストシーンだろう。
 コミュニティ放送の限られた電波受信範囲内という世界が
描き出す「これまでの世界」から「未知の世界」への旅立ち。
 別れの寂しさ、旅立ちの厳しさ、そしてそれ故の明日への
希望がギュッとワンショットに凝縮された秀逸な場面だ。
 作品全体にもいえることだが、一人の少女の「小さな世界」
のリアルを切実に描くことで、そのことが同時に「大きな世
界」をも象徴的に表現しているのである。


 震災当時、テレビではなくラジオ、という評価が再確認さ
れたように、現実をありのままに(それ故、時に冷酷に)映
し出すテレビとは違って、音声のみで情報を伝えるラジオと
いうメディアは、「リアルタイムなドキュメント」でありな
がら、聴き手の想像力が頼りである。その意味で、映画やド
ラマの「フィクション」もまた、受け手の想像力をかき立て
つつ、その問題意識の有り様に肉迫する力を秘めている。
「映像」だけでは描けないものを描く。うまく「言葉」には
ならない思いを伝える。ドキュメンタリとはまた違う「メッ
セージ」発信の有効性は、並行して評価されるべきだろうと
思う。
 劇中の人々が「ラジオ」というメディアを使って、誰かに
誰かの声(思い)を伝えたように、ドラマ『ラジオ』が人々
に伝えるメッセージも大きいと思う。これは何より再放送さ
れるべき作品であり、より多くの人に届けられるべきドラマ
である。

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