【映画批評 過去記事から】
金髪の草原■1999/ビスタサイズ/96分
■制作:プライム・ピクチャーズ
    フィルムメイカーズ
監督・編集:犬童一心
脚本:佐藤佐吉、犬童一心
原作:大島弓子
撮影:村上拓
照明:筑田康司
音楽:吉澤瑛師、CHOKKAKU
出演:伊勢谷友介、池脇千鶴、松尾政寿
   唯野未歩子、加藤武

 

 心臓病を患っている80歳の日暮里は、ある朝、20歳の頃の
記憶と心を持って目覚める。思うように動かない身体や周囲
の変化に戸惑う彼の元に、新人ホームヘルパーのなりすがや
って来る。彼女は日暮里が学生時代に秘かに想いを寄せてい
たマドンナにそっくりだった…。

 「不可能恋愛」を可能にする為の7日間のファンタジー。
あるいは一人の男がその人生における最後の7日間に観た束
の間の夢。映像の組み合わせ、シーンの流れが生み出すニュ
アンスがきわめて純文学的な香りを放つ一方、映像演出はあ
たかもドキュメンタリ風で、生々しいカメラワークが濃厚な
現実感をまとわせながら、物語の情景を切り出していく。
 映画は平易な表現を避けるようにきわめて暗示的シーンの
連続で、必要最小限の情報だけしか提示されず、その物語は
理想郷的世界へギリギリまで接近しながらも、あくまで現実
的な結果だけを淡々と受け入れる。

 日暮里は劇中設定こそ80歳だが、映像上は一貫して20代の
(伊勢谷友介の)姿であり、なりすと同一画面に入るシーン
では、終始本来の年齢設定がぼやけて見えてしまう。そんな
言わば精神的なタイムスリップで「現代へやって来た」純朴
な「青年」を伊勢谷友介が好演。たどたどしセリフ回しが逆
にプラスに機能している。なりす役・池脇千鶴が持ち前のほ
わっとした柔らかさに加えて、ハードな部分、きりっとした
意志の強さを表現してみせる。

 血のつながらない弟への気持ちを抱えたなりす、軋む家庭
環境の中で寂しさを抱え、日暮里に憎まれ口をきく隣家の少
女。見えている世界と感じている時間、互いの現実と幻想が
次第に混濁していく中で、自分の「現実」へ帰還するため、
あえて「青空」に向かって「飛ぶ」ことを選ぶ日暮里。
 それは痛烈に切なくて哀しく、しかしそれ以上に猛烈に爽
やかで、ほのぼのと優しく、ほろりとさせられてしまう。
 「自分だけの時間」を自分らしく生きる、ということ。た
とえそれが夏の日の夢だったとしても、夢見た時間もまた、
かけがえのない「現実の一部」なのである。

(天動説:2010/12/17)

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