【映画批評 過去記事から】
YUMENO ユメノ■2005年/ビスタサイズ/93分
■制作:ムービング・ピクチャーズ・ジャパン
監督:鎌田義孝
脚本:井土紀州、鎌田義孝
撮影:鍋島淳裕
照明:福田裕佐
編集:金子尚樹
音楽:山田勳生
出演:菜葉菜、小林且弥、金井史更
   夏生ゆうな、小木茂光、伊藤猛
   渡辺真起子、内田春菊、寺島進


 衝動的に強盗殺人を犯して逃亡する青年ヨシキ、その彼と
出会った事で両親を殺されてしまう女子高生ユメノ、父が自
殺したことで、母親の住む町をひとり目指す少年リョウ。三
者三様の思いが交錯する、魂のロード・ムービー。

 日常の中に如何ともし難く存在し続ける、必ずしも強圧的
とはいえない圧迫感。少しずつ軋み続ける毎日から、身近に
突然起きた「死」という現実によってはじき出され、生きる
ための手がかりを求めて旅立つ3人の少年少女。
 時系列を前後させながら、3人のそれぞれの思いがもつれ
ていく中で、「肉親への執着」という、どこかで彼らを「束
縛していたもの」からの解放が、それぞれの運命の形を変え
てゆく。

 同じ車で移動しながらも、彼らの関係は常に脅迫的な主従
関係であって、心の交流はまるでない。このクールでドライ
な視点は全編に一貫していて、冬の北海道を舞台にした事も
あり、その厳しさが画面に張りつめた緊張感をもたらす。
 常に対象を突き放したような映像は、安易な感情移入を許
さないし、ドラマも何ひとつ予定調和に進まず、口当たりの
いい優しげな回答を何ら示そうとはしない。映画はただひた
すら彼らの道行きを追い続け、我々はそれをただ見つめ続け
るしかない。その圧倒的な映画の力は、観るものの内面に荘
厳に反響する。

 菜葉菜演じるユメノの存在感が素晴らしい。思い詰めた表
情、儚げな背中、偽りの青い瞳。限界まで研ぎ澄まされ、煮
詰められた、名付けようのない思い。止めようもなくほとば
しる渾身の叫びが、激しく胸を打つ。

「ここではないどこかで、今とは違う自分になる」
 先導する「ワタリガラス」がいなくなった時、少女と少年
を乗せた「方舟」は、見果てぬ海を「希望」を目指してひた
すら進む。流氷の様に世界に取り残されてしまった絶望感が
あまりに鋭く、切なく、胸に痛い。(2010/11/06 天動説)


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