【映画批評 過去記事から】
シン・ゴジラ■2016年/シネスコサイズ/120分
■制作プロダクション:東宝映画=シネバザール
脚本・編集・総監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括・B班監督:尾上克郎
撮影:山田康介
照明:川邉隆之
美術監督:林田裕至
C班監督:石田雄介
ゴジライメージデザイン:前田真宏
ゴジラキャラクターデザイン:竹谷隆之
編集・VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀
音楽:鷺巣詩郎
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ
   高良健吾、松尾諭、津田寛治、平泉成
   市川実日子、塚本晋也、高橋一生/
   余貴美子、國村隼、柄本明、大杉漣

東京湾・羽田沖—アクアトンネルが崩落する原因不明の事故
が発生した。内閣官房副長官・矢口蘭堂は首相官邸での緊急
会議で、海中に棲む巨大生物による可能性を指摘。周囲の冷
笑を買うが、その直後、海上に巨大不明生物が出現し事態は
急転する。。ゴジラと命名された謎の巨大不明生物は、次々
と街を破壊し、ついには自衛隊との一大決戦となるが、人智
を越えた完全生物には歯が立たない。迫る東京壊滅の危機を
前に、矢口を局長とした特設災害対策本部のメンバーがゴジ
ラに打ち勝つベく知力を尽くして対抗する。


d(>_<  )Good!!(2016/08/05 ユナイテッドシネマ札幌 スクリーン2)

 未知の怪獣と人類との戦いを描く映画『シン・ゴジラ』。
日本映画が生み出した稀代のキャラクターに、まったく新し
い体制で挑んだ新生ゴジラは、これまでのゴジラ像を継承し
つつもそれを大きく覆し、オリジンに最も近く、そして最も
遠く進化した、 まさに2016年の「現代のゴジラ」となって
スクリーンに「出現」した。

 「震災以降の日本」という現実を踏まえ、その同時代性に
立脚したリアルな災害シミュレーションと、詳細なデータを
踏まえた大胆不敵な怪獣迎撃エンタテイメント——
 現実世界に怪獣が現われたらどうするか、というフィクシ
ョンを語りつつ、政治・外交・防衛問題に到るまで、日本と
いう国の現状に切実な問いを投げかける。もちろん娯楽映画
としての怪獣による破壊のダイナミズム、いわば怪獣映画の
醍醐味も忘れてはいない。臨場感あふれる実景と、VFXと特
撮を駆使したリアルな映像、マニアックなまでの自衛隊描写
など、予想をはるかに越えた迫力の映像に圧倒される。
 『シン・ゴジラ』は紛れもなく第一作『ゴジラ』(1954)
のアップデート版であり、私見では、原点回帰を目指しなが
ら作品的には芳しくなかった『ゴジラ』(1984) の、ある意
味での仇討ちという趣も感じられた。

 今回フルCGで描かれたゴジラはその禍々しいデザインをは
じめとする斬新で大胆な設定で、旧来からのファンであればあ
るほど度肝を抜かれること必至だろう。その登場場面のほとん
どが白昼シーンであるにも拘らず、畏怖の念を抱かせるに充分
な圧倒的な存在感、その挑戦的な画作りの素晴らしさ。「ゴジ
ラ=核のメタファー」という呪縛を一旦解いた上で、自然災害
の猛威の象徴、あるいは「自然」そのもののフラクタルな分身
として再定義している点は慧眼と言える。
 理由もなく突然現われるゴジラは、恐竜の生き残りという従
来の概念からも外れた、まさしく超生命体であり、幻のように
そびえ立つ幽鬼のようなその異形は、怒りや怨念を越えた、い
わば精霊的な意味での「神」のイメージを感じさせ、謎めいた
雰囲気が強烈な印象を残す。

 だが、映画の作劇としては前述の二つの要素が、前半のシ
ミュレーション・モードと後半の娯楽映画モードに明らかに
分離してしまい、良くも悪くも異なるテイストが連なる映画
になってしまった感がある。とりわけ前半部分はリアリティ
を重視するあまり、状況説明がひたすらクールに展開するた
め、侃侃諤諤の会議シーンを面白がりつつも、息が詰まりそ
うで、やや退屈に感じなくもない。
 本来は主要人物の1人・矢口(長谷川博己)が物語の主軸
となって観客を物語に誘導すべきなのだが、正直いまひとつ
心情的に彼にノレないのが難点である。一貫して巨大生物の
可能性を主張する理由も不明瞭だし、役職的な立場があると
はいえ、行動原理も見えず、主役としては甚だ心許ない。

 そんな「観客が置いてきぼりになってしまう」問題を打破
し、物語への没入の突破口になるのが、石原さとみ演じるア
メリカ大統領特使のカヨコである。どこかエキセントリック
で、ストレートに感情を発露する彼女には「この状況を解決
したい」という明確な動機があり、立場上もいちばん客観的
で、ある意味で観客の側に最も近いといえる。一見、物語世
界から浮いたように見える彼女の存在が、逆に観客を物語に
引き寄せ、娯楽映画としては余計な息苦しさに風穴を開け、
ドラマ的には空回り気味だった映画を軌道に乗せる役割を果
たしていることは特筆に値するだろう。カヨコと並ぶことで、
相対的に矢口のキャラクターさえも際立って見えるのである。

 カヨコの登場とゴジラの掟破りの反撃で、ガラリと物語の
テイストが変わる映画後半は、優秀だがクセのある人物揃い
の「巨災対」チームの面々(津田寛治、塚本晋也、高橋一生、
市川実日子らが好演)の活躍篇である。ゴジラ撃滅のための
国際的な政治判断で東京壊滅の危機が迫る中、知力・科学力
・不屈の精神力でゴジラ撃滅作戦の立案と実行に奔走するメ
ンバーたちのシークエンスは、映画前半とは対照的に、ユー
モラスで快活で高揚感がある。
 ゴジラの分析データから考案された奇想天外な「ヤシオリ
(八岐大蛇に飲ませた酒の名前)作戦」も派手にケレン味た
っぷりに展開で、ばかばかしさ寸前のところまで盛り上がり、
すこぶる面白い。もし、ヤシオリ作戦実行までの過程とチー
ムの奮闘のドラマをもっと映画の主軸として描けていたら…
と考えると実に口惜しいほどである。

 人類への警鐘であると同時に、人類が継承していかねばな
らないものを否応無く見せつける今回のゴジラ。希望と不安
が同居するラスト、あのゴジラははたして「最後の一匹」な
のか。破壊のあとの再生、すべてはここから始まる。  ■
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Name:竹澤収穫



 邦画が中心の映画批評人。
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