【映画批評 過去記事から】
おと・な・り■2009年/ヴィスタサイズ/119分

監督・編集:熊澤尚人
脚本:まなべゆきこ
撮影:藤井昌之
照明:舘野秀樹 美術:橋本優
録音:古谷正志
音楽:安川午朗
出演:岡田准一、麻生久美子
   谷村美月、池内博之
   岡田義徳、郭智博、市川実日子
   清水優、とよた真帆、平田満
   森本レオ



 風景写真を撮る夢を抱きながら、広告撮影に多忙な毎
日を送るカメラマンの聡。フラワーデザイナーを目指す
花屋のバイト店員・七緒。同じアパートの隣同士に暮ら
しながら、全く面識がない二人は、いつしか互いの部屋
から伝わってくる「生活の音」に癒しを感じるようにな
っていた…

 日常、身の回りに溢れている「音」。普段は気がつか
ないような生活音。耳を澄ませば聴こえてくる、聴こう
としなければ聴こえない「音」の存在は、観ようとしな
ければ観えない「人の気持」にどこか似ている。
 隣室から聞こえてくる囁かな「音」に心を支えられた
二人。映画はそういった状況を、奇を衒うことなく、さ
りげなく提示する。細やかな演技と慎み深いカメラワー
ク、全体的にきゅっと締まった映像が美しい。

 岡田准一と麻生久美子、二人の「声の質感=音」が、
セリフ自体の意味を越えた、微妙なニュアンスを表現し
て極めて雄弁にドラマを生む。嫌みにならないギリギリ
の押しの強さを見せる谷村美月の存在もチャーミング。

 背中合わせの部屋という異なる二つの空間、二つの時
間軸を、そこに発生する「音の響き」がつなげてしまう
という映画ならではの空間性、時間性の面白さ。一時、
耳をそばだてる時の意識の変調・その官能性は、劇中の
二人だけでなく、スクリーンという「壁」をはさんでも
う一人の隣人(つまり私たち)にも共鳴する。

 二人それぞれの心の軌跡を少しずつ丹念に描いて積み
重ねていく作劇は、クライマックスで、あたかも「今ま
でずっと恋愛映画だったかのような」錯覚が生じるほど
自然に「二人の運命的な恋愛物語」に帰結する。
 2本の青春映画プラス、1本の恋愛映画という、ちょ
っとした贈り物のような嬉しい作品である。
                (2011/2/4 天動説)


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