【映画批評 過去記事から】
私の叔父さん■2012年/ビスタサイズ/99分
■制作:アイエス・フィールド
監督:細野辰興 原作:連城三紀彦
脚本:細野辰興、中井邦彦
撮影:金子正人
照明:永田英則
編集:太田義則
音楽:藪中博章
出演:高橋克典、寺島咲、松本望
   山田キヌヲ、草野康太、大川良太
   長谷川初範、鶴見辰吾、松原智恵子

【映画公式サイト】→


 カメラマンの構治(高橋克典)は大学受験のため自宅に
泊めていた姪の娘の夕美子(松本望)の言葉をきっかけに、
18年前の記憶を振り返る。まだ先の見えない駆け出しの
頃。構治は兄妹のように育った6歳下の姪・夕季子(寺島
咲)と再会、しばらく同居することになる。それなりに楽
しい生活が続く中、自分に対する夕季子のある「想い」を
知った構治だったが…
d(>_<  )Good!!(2012.8.29 蠍座)
 叔父と姪のプラトニックな恋愛の軌跡が、現在と過去の
二つの時制を交互に往来しながら語られる本作は、「恋愛
映画」を基本線としながら、主人公・構治のカメラマンと
しての修行時代を描く青春映画/余りにも健気な少女・夕
季子の切ない純愛映画/夕美子を「探偵」と見立てた謎解
きミステリ/あるいは作品全体として、平凡な日常を舞台
にしたハードボイルド映画…と、観る角度によって多様な
イメージを見せる、文芸作品の枠を越えた「映画的魅力」
が全編に横溢する作品である。

 主人公を通して男性目線で描かれる物語は、ある意味で
限り無くセンチメンタルだが、その描写は徹底してストイ
ック。必要最小限に抑えたセリフによる深みのある会話や、
必要不可欠なショット以外は大胆に削ぎ落す乾いたタッチ、
奥行きが計算された画面構成(上京した夕季子に部屋の間
取りを見せるシーン、自転車でトラックに突っ込んでいく
シーン、去っていく後ろ姿、布美雄がテーブル越しに構治
に飛びかかるショット等々)の中、人物の動きが横方向と
縦方向(奥行き)の「視線の動き」を誘発することで、常
にシーンに緊張感と躍動感が生まれ、2時間弱のタイトな
上映時間を一時も飽きさせない。

 また、物語進行の大きなポイントとなっている「回想シ
ーンの挿入」においては、二つの時制の転換を演出と編集
の面白さでスムーズにみせる一方、20代と40代を違和
感なく演じ分ける高橋克典の存在性によって、それぞれの
時代に存在する寺島咲と松本望のイメージの境界が、まる
で「同一人物」であるかのように次第に曖昧になっていく
ことで、過去と現在の間で複雑に揺れる構治の心情が「映
像表現」として見事に具現化され、そのことがドラマに強
い説得力(観客の自然な感情移入)をもたらす。
 「映像が物語を語る」(モーション→エモーション)と
いう映画の本質を活かした作劇、すなわち本作では、すべ
ての場面で「観ること」がそのまま「面白さ」に直結して
いるのである。

 「語る」ことと「語らない」ことの誠実さ。本当の気持
を隠す「嘘」と言葉にならない「誠」の繰り返し。その中
で結晶のように残った五枚の写真が、現在を中心点として
過去と未来とを大きく動かす。
 様々な愛の形が記憶と追憶の中から顕現するクライマッ
クス、構治が出した「結論」が正しかったかどうかは明確
にされないが、その答えはきっとこれから彼が撮っていく
沢山の写真の中に存在するのだろう。
 愛は不自由で、言葉は不実で、人生は不確かである。し
かしそれでも人は、誰かを愛し愛されて生きていく。
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2012鑑賞   細野辰興   高橋克典   山田キヌヲ   蠍座  
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Name:竹澤収穫



 邦画が中心の映画批評人。
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