【映画批評 過去記事から】
KG カラテガール■2011年/ヴィスタサイズ/91分
■制作:アマゾンラテルナ/ダブ
監督:木村好克
脚本・アクション監督:西冬彦
撮影:相馬大輔
照明:三善章誉
編集:村上雅樹
音楽:安川午朗
出演:武田梨奈、飛松陽菜、中達也
   入山法子、横山一敏、滝沢沙織
   リチャード・ウィリアム・ヘセルトン
   堀部圭亮



 世界最強といわれる伝説の紅(くれない)空手の家系に生
まれた彩夏と菜月の姉妹。二人は父・達也のもとで日々けい
こに励んでいたが、謎の暗殺組織に襲われ父は死に、妹が連
れ去られてしまう。時が流れ、素性を隠してごく普通の女子
高生として暮らしていた彩夏は、ある出来事をきっかけに菜
月と再会するが、妹は暗殺拳の使い手となっていた…

 伝説の空手流派伝承の証の「黒帯」を巡って、父の敵の暗
殺組織に空手で立ち向かう少女の物語。快作『ハイキック★
ガール!』に続く武田梨奈主演のアクション映画で、本作で
もワイヤーアクション・スタント・CGなしで、実際に蹴り
や突きを相手に入れ、自らも受けるというハードアクション
に徹して観る者の度肝を抜く。

 とにかく殺陣でありながら本物の空手の蹴り、突き・手刀
が繰り出されるため、アクションのひとつひとつが、付随す
る効果音以上の迫力で伝わってくる。主演の武田梨奈、新人
・飛松陽菜の圧倒的な身体能力がスクリーン内を立体的に飛
び跳ねる様はそれだけで圧巻だが、同時に空手道の基本に忠
実に、攻撃的な姿勢を諌め、「守る」姿勢の重要さを説くス
タイルを前作から継承。今回も「技」の強さより「型」の大
切さを繰り返し描いている。その意味では派手な格闘アクシ
ョン映画というよりは、極めて頑固な「武術映画」だともい
える。

 しかし「実闘空手アクション」というコンセプトが成功し
ている反面、全編アクションの魅力で押していく展開のため
に、もうこれ以上削れないギリギリまでドラマが削り込まれ
ていて、ドラマ部分が勢い状況説明的になりすぎてしまい、
敵組織の行動目的やボスキャラ設定も類型的・記号的なレベ
ルに留まってしまった感は否めない。彩夏を支える美樹(入
山法子)との関係性や日常描写(帰宅するショットまであり
ながら、家庭内の生活シーンが一切ない等)をもっと観たか
ったし、妹が連れ去られて以降の彼女がどういう心情で暮ら
してきたのかという、ストーリー上、最も重要な部分が希薄
なため、妹と再会する彩夏のドラマが弱くなっている点も正
直惜しまれる。

 主演の武田梨奈がボディアクション、とりわけ蹴りのスピ
ードとシャープさばかりがとかく注目されがちだが、極めて
ナチュラルで細やかな感情表現が出来るところはとても心強
い。前作では負けん気が強く若さまっしぐらな女子高生役を
演じたが、今回は早くに父を亡くし、行方不明の妹がいる設
定から、ちょっと大人びていて落ち着いたイメージ。父の教
えに忠実に「守るために闘う(できれば戦いは避けたい)」
というスタンスでギリギリまで耐えるが、実妹の境遇を知り、
ついに敵地に単身乗り込むことになるのだが、それ故に感情
を抑えた演技が多く、例えば敵組織から呼び出しのメールを
受けて、妹奪還を決意するシーンでの感情の微妙な変化・表
情のニュアンスなど、強く印象に残る。

 「アクションとは、全身を使った感情表現=演技である」
という原則に忠実な彼女の殺陣には、単に手数をこなすだけ
ではない説得力があるが、その点から言えば、作品全体的に
妹役・飛松陽菜にかなりの見せ場を譲ってしまった感もあり、
折角の彼女の潜在的なパワーがやや消化不良になってしまっ
たのは非常に勿体ないと思う。もっと真っ正面から「武田梨
奈いち押し」で突っ走っていいのではないだろうか。

 前作と本作をホップ&ステップとして、ぜひ主演第3弾で
はより高い「ジャンプ」からのハイキックをさらに華麗に決
めてほしいと思う。「日本発のアクション映画」という標的
はすでに彼女の間合いの内にあるのだから。

(4/3 天動説 ディノスシネマズ札幌劇場)


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