【映画批評 過去記事から】
ドロップ■2009年/ビスタサイズ/122分
監督・原作・脚本:品川ヒロシ
撮影: 藤井昌之
照明: 松隈信一
編集: 須永弘志
音楽: 沢田完
出演:成宮寛貴、水嶋ヒロ
   上地雄輔、本仮屋ユイカ
   中越典子、波岡一喜
   若月徹、綾部祐二
   哀川翔、遠藤賢一



 不良にあこがれる中学生・ヒロシは不良のいる公立中学校
に転校。さっそくカリスマ的な不良・達也に目を付けられ、
タイマンを張る羽目に。ボロ負けしたものの、なぜか気に入
られ、彼が率いるグループとつるんでケンカ三昧の毎日を送
ることに。それでもなんとか卒業、進学することができたヒ
ロシだったが…

 突然思い立って髪を染めて不良デビューしたヒロシと、そ
れに早速目をつけた達也たちグループとの衝突を皮切りに、
不良学生たちがひたすらケンカに明け暮れる日々。素手の殴
り合いだけでなく、武器あり奇襲ありで容赦なく激突する格
闘アクションのダイナミズム、思わず目が画面に釘付けにな
る面白さが全編にわたって横溢している。そしてその豪快に
暴れ回るアクションの面白さは、カットを割らずに丸ごとそ
れをつかみ取るカメラワークによって、そのままストレート
に「映画の面白さ」として昇華されていくのである。

 飽きることなく繰り返される殺伐としたケンカシーンが、
無意味なまでに観る側のテンションを上げる一方、そのダイ
ナミックさの中に、登場人物たちの会話の軽快なテンポと緩
急のリズムが適宜組み込まれることで、相乗的に面白さのベ
クトルを上向きに保ち続ける。その硬軟真逆のベクトルで派
生する独特のユーモアや下らなさ・馬鹿馬鹿しさ、あるいは
主人公の恋愛や友情、生き方への煩悶などの青春映画要素な
どが余すところなく描かれることで、「拳を交えた男同士に
は互いの気持が判り合える!」式の厳ついパッケージングの
わりに、どこか爽やかな少年の成長物語としてもちゃっかり
成立している。この「ちゃっかり感」が映画をとてもチャー
ミングなものにしていると言える。

 生々しく負傷しながらもわりとケロリと戦線復帰するあた
りの、画的なリアルさと画的な面白さとのサジ加減、そして
全編にわたる何処か飄々とした演出は、漫才が本業の品川監
督ならではの絶妙なバランス感覚によるところが大きいと思
うが、キャラクターたちの活き活きとした存在感とアンサン
ブルの楽しさ、活力溢れる描写は、『ビーバップ・ハイスク
ール』シリーズや『湘南爆走族』のツッパリ高校生もの系譜
を隔世遺伝的に蘇えらせたような味があり、その辺りも密か
に方法論として狙ったのでは…という感も。

 思いがけない出来事が重なり、高校生活からも、誰かに見
守られた平穏な生活や仲間たちとつるむ日々からもドロップ
する(降りてゆく)ヒロシは、再びそれまでとは違う新しい
世界へと自ら転じていく。物語の冒頭とシチュエーションを
反復するヒロシと達也のケンカシーン。だが、ここでのヒロ
シは、意地で相手に屈しなかった以前の彼と比べて、明らか
に強く太くなっていて、達也を圧倒する勢いの気迫が静かな
感動を呼び起こす。

 …しかし、そこに何らかの教訓を読み取ろうとするのは、
ただの徒労に過ぎないかもしれない。ヒロシの青春の愚行の
一部始終、それがある意味この映画の全てであり、我々もた
だラストシーンまで彼につき合い続け、そして駅のホームか
ら彼の新たな出発を見送る、ただそれだけでいいのだ。
(それは、劇中でヒロシを見守るヒデや、仲間たちの視線と
も次元を越えて重なる)

 その意味でも、この作品は極めて「映画」的である。映画
を、物語を、ただひたすら「見つめ続けること」。そこにか
つて愛すべき「人間=映画」が存在していた。もはやそれだ
けで、この作品には十分過ぎるくらいの価値がある。

(天動説)

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