【映画批評 過去記事から】
SPACE BATTLESHIP ヤマト■2010年/シネマスコープサイズ/138分
■制作:ROBOT VFXプロダクション:白組
監督・VFX:山崎貴
脚本:佐藤嗣麻子
撮影:柴崎幸三
照明:吉角荘介
美術:上條安里
編集:宮島竜治
音楽:佐藤直紀
出演:木村拓哉、黒木メイサ、柳葉敏郎
   緒形直人、西田敏行、高島礼子
   堤真一、斎藤工、池内博之、マイコ
   矢柴俊博、波岡一喜、三浦貴大
   橋爪功、山崎努



 2194年、正体不明の敵ガミラスの攻撃により、人類の
大半は死滅、遊星爆弾によって放射能汚染された地球に、滅
亡まで残された時間は後わずかだった。しかし、14万8千
光年先にある惑星イスカンダルからのメッセージを受けた人
類は、最後の望みを託して宇宙戦艦・ヤマトを建造。元エー
スパイロットの古代進を含む乗組員たちは、放射能除去装置
を求めて、はるかイスカンダルを目指す。

 抜群の特撮映像センスと最新デジタル技術を駆使した『ジ
ュブナイル』(00)、『リターナー』(04)の2本で、「日本映
画でSFは無理」という諦観、根強くはびこるその「呪縛」
を少しずつ解き放ってきた山崎貴監督が、満を持して宇宙を
舞台にして挑む、真っ向勝負の『日本製SF映画』。それが
この『SPACE BATTLESHIP ヤマト』である。

 映画は「滅亡に瀕した地球」をファーストシーンとして、
早いテンポで物語が進む。原作となるTVシリーズは全26
話の長編物語で、盛り込むべき要素も多く、シークエンスの
取捨選択と全体の組込み加工の難しさは想像に難くないが、
まるで「熟成された酒を新しい革袋に入れる」が如く、原典
となる作品を見事なまでに現代的に再構成してみせる。

 本来スペースオペラである作品を、よりSF的な方向へト
ランスレートするための新解釈(とくにイスカンダルとガミ
ラスの設定)や、作品テーマをより鮮明にするための設定の
変更など、アニメーション故に可能だったファンタジックな
描写・表現の実写映画における誤差修正のための大胆なアレ
ンジの数々。白組スタッフによる緻密なVFXと、前述の2
作も手がけた上條安里の卓越した美術センスが相まって、空
想の未来世界に格段のリアリティが宿っている。

 キャスティングもおよそ考える限りベストメンバーで固め
られ、その俳優陣の血の通った演技は、作品を単なる「コス
プレ大会」に堕することのない、しっかりした「物語世界」
として成立させている。とりわけ古代進役の木村拓哉は、資
質としての強烈な存在感がヒーローキャラクターのパーソナ
リティと見事にシンクロしていて出色の出来となった。ドラ
マの主人公はまさに彼であり、古代の行動を中心としてスト
ーリーは展開する。森雪や沖田艦長ら周囲の人間との衝突と
和解、信頼と協力、あるいは未知の知的生命体との遭遇にま
つわる冒険ストーリーを、映画は十二分に描き出す。

 しかし一方で、ヤマトそのものの「キャラクター」性、要
はその機能や性能を細かく描写するレベルまで踏み込んでい
ないのでは、と指摘することもできる。『スタートレック』
などの海外SFドラマに範をとったであろうアプローチは必
然的に、主人公が使う「メカニック」としてヤマトを定義づ
けるため、タイトル・キャラクターとしての『ヤマト』の活
躍、という「日本のアニメ文化」的観点からは不満が残る。

 また、全体的にカメラがきわめて主観的で、宇宙空間的な
マクロ世界にありながら、画面に映されるものが「登場人物
が認識可能な範囲内」に留まっている点。この「客観性の不
足」は、「ワープ航法」に関する説明と一連の描写の物足り
なさ、イスカンダルまでの物理的距離と時間の感覚の希薄さ
など、物語のあらゆる場面で「空間性の広がり」を損なう方
向に作用して、横長のシネマスコープサイズの割りには画面
が「狭く」感じられてしまう大きな要因となってしまった。

 とはいえ、それらのウィークポイントを抱えつつも、映画
を終始楽しめてしまうのは、やはり淀みなく進む物語のスピ
ード感と躍動感、盛り沢山の映像の面白さ=楽しさという心
地よい「驚きの連続」によるものだろう。
 ヤマトの艦載機コスモタイガーによる高速の宇宙戦では、
前述とは逆に「主観的な部分」が効果的に作用して、圧倒的
な「闇の深さ」に対する恐怖感を内包しつつ、スピード感あ
ふれるスリリングな映像を展開し、他にもヤマト最大の武器
・波動砲や全砲塔射撃の迫力、イスカンダルでの白兵戦の緊
迫感、未知の生命との接近遭遇の荘厳さ、地球帰還のための
最後の決断に迫る乗組員たちそれぞれの思いとその顛末など、
まさに息をもつかせぬ展開で胸に迫ってくる。

 地球滅亡までのカウントダウンを背負ったヤマトの航海を
(実質2時間強で!)描こうとする物語は、いきおいアップ
テンポにならざるをえないが、停滞して考え込んでしまう隙
を与えずに、あらゆるレベルで次々と発生する「難問」を同
クリアするか。そのスリリングさにすべてを賭けて一気呵成
に突き進むドラマ、そのベクトル感覚は、やはり心を高く踊
らせるに十分足るものである。

 どんな状況下でも絶対諦めないこと。映画は愚直なまでに
このメッセージを訴え続ける。諦めずに目的に向かって一歩
でも前進しようとする意思が、状況を打破していく。
 この30年、SFといえばアニメーションの独壇場だった
邦画に、『ヤマト』はまさしく波動砲の一撃のように、風穴
を開け、名実共に積年の「借り」を「120%」返してくれ
た。「未知の世界」への新たな航海は、今まさにここから始
まっていくのである。       (2010.12.27 天動説)


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