【映画批評 過去記事から】
サムライアべンジャー■2008年/シネスコサイズ/カラー(一部モノクロ)/92分
監督:光武蔵人
脚本:光武蔵人、ジョン・ミグダル
撮影:中原圭子
編集:ジョン・ミグダル
音楽:ディーン・ハラダ
出演:光武蔵人、ジェフリー・ジェームズ・リポルド
   ドミチアーノ・アーカンジェリ、伝田真理子
   神田昭洋、小坂正三、鎌田規昭
   メーガン・ハリン、エイミー・ブルーム、ミア・ミラー
   アマンダ・プラマー(特別出演)

【映画監督・光武蔵人オフィシャルサイト】→
【映画公式サイト(英語)】


 8年前、妻と娘を殺され、自身も盲目となった男は剣術を
学び、復讐の剣士「盲狼」となって再び砂漠の町へ戻った。
 憎むべき敵・フレッシャーが刑務所から出所する日。彼を
倒す為に道を往く盲狼の前に、7人の刺客が次々と立ちはだ
かる…

 時代考証なしの無国籍な舞台、西部劇スタイルとサムライ
剣劇が渾然一体となった奇想天外かつストロングスタイルの
復讐譚。基本的にシンプルかつシリアスなストーリーの中に
アクション時代劇、マカロニウエスタン、イタリアン・ホラ
ーや70年代アクションなど、古今東西の様々なジャンルの
娯楽映画へのオマージュを貪欲に盛り込んだ本作は、むせ返
るほどの圧倒的な映画の匂いと、映像的な面白さが持続して
とにかく次の展開にわくわくさせられる。
 また、「銃(西部劇)VS剣(時代劇)の激突」というコ
ンセプトと映像には、岡本喜八監督『イースト・ミーツ・ウ
エスト』(95)への強い敬意が感じられる。(実際にエンドロ
ールには岡本監督への献辞がクレジットされる)

 様々に引用される「映画の記憶」は、単なる作品のパロデ
ィではなく、それを「素材」として、さらにひと手間加えた
新しい映画的アイデアにバージョンアップされている。それ
ゆえ、一見デタラメで荒唐無稽に思えるこの「世界」におけ
る絶妙なリアリティのバランス・「物語の空気」を終始崩す
ことなく、ぴたりと違和感なく「映画の流れ」の中に収まっ
て機能している。
 また、血飛沫などのゴア・シーンが多く、描写もハードな
わりには、作品の端々にさりげないユーモアが感じられ、こ
とさらコメディ的に笑いを取るわけではないにも関わらず、
全体的にジメジメとした陰惨な印象も薄く、作品をどこか陽
性で、「乾いた」イメージでまとめているのも、演出のセン
スの賜物だろう。
 旅路を捉える際に多用されるロングショットや移動しなが
らの長回しのワンショットなど映像的な工夫も多く、画面の
ひとつひとつに存在する多種多様な「質感」が観る目を引き
つける。適宜挿入される日没や荒野、森の中などの自然風景
のエモーショナルなショットも極めて印象的である。

 殺陣は、ワイヤーアクションや過度のアクロバティックな
「チャンバラ」を排したリアリティあふれるもので、「居合
い斬り」を中心とする「間合いの取り合い」重視の一撃必殺
の勝負で統一されている。その一方、銃や弾丸をまっ二つに
斬ったり、刀の血振りにCGを使ってみせるなどのケレン味
も適量加えるなど、「勝負がついた後」をどう効果的に見せ
るかに腐心している。
 英語で度々挿入される「解説」シーンや「説明」ナレーシ
ョンのセンスも面白く、無国籍・無時代的なポップな世界観
を堂々と用いながらも、「サムライ・ニンジャ・ハラキリ」
的な欧米の「勘違い武士道」像にきっちり釘を刺すあたりも
心憎い。

 物語は、事の発端・過程・ラスト、そして「その後」に至
るまで、言わば「血と殺戮」で満ちているが、映画は表側で
は盲狼VS刺客の戦いを、ゾンビまで飛び出すほどの奇想天
外なアイデアの面白さで見せる一方、敵味方問わず「内的」
な部分にも心を砕く。彼らは血に塗れたその死の間際、最期
にそれぞれの「思い」を独白する。懺悔・感謝・称賛・後悔、
そして絶望を。斬られた傷口から噴き出す血の迸り、それは
同時に「感情」の迸りであり、流れ出る血は「涙」である。
 ここでは血肉が飛び散る「スプラッタ描写」の映像的な面
白さが「それだけ」にとどまることなく、人間の心情を表現
する「映画的描写」としても見事に成立している。そこに見
せ物的な凡百のスプラッタ作品とは違う、映画的な「志の高
さ」を感じる…といったとしても、けっして過剰な評価には
ならないはずである。

…死臭漂う世界から生還した男は、今度は「殺人剣」ではな
く、「活人剣」を振るう。あまりに鮮やかな切れ味をみせる
その「ラスト・シーン」、そこには文句なしの「活劇映画の
痛快さ」が間違いなく存在する。

(2011.01.05 天動説)

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